9000マイルの約束

ソ連の公安が暴れる映画は珍しい

拷問度 100
ソ連公安度 100
珍し度 100
総合得点 85

ネタばれ含みます。

 2004年、ドイツ映画。
 第二次大戦が終わって、
ソ連の強制収容所に送られたドイツ兵が脱獄して歩いてドイツに帰って家族と再会する話。実話らしい。

 この映画は結構良かったですね。シベリアの収容所の寒そうなこと寒そうなこと。そしてソ連の公安の怖いこと怖いこと。
 ストーリーの流れとしては、1944年にバイエルンから出征する主人公クレメンス、見送りに来る家族は妻と娘、そしてお腹の中にいる息子だ。
 すぐ帰るよ、と言うもののソ連の軍事裁判で戦犯にされ、25年の強制労働を言い渡される。食べ物もまともな服もなく、列車で雪原を移送されていくサマは
まるでホロコースト映画におけるユダヤ人のようです。

 ちょっとしたことでソ連兵はPPSH1941でドイツ兵を射殺してしまう。容赦ないです。恐ろしい。
 ソ連兵によるドイツ兵に対するリンチは残忍で陰湿です。例えば一体零下何度なんだ?と聞きたくなるぐらいの吹雪の中を銃を突きつけて服を全部脱がしたり、ドイツ兵が心の拠り所にしている母親からの手紙を目の前で破り捨てたり、穴の中に閉じ込めて風雨に晒してほったらかしにしたり、寒さで次々とドイツ兵が力尽きていく中、点呼をわざと何度もとらせたり、
ひどい

 これはアレですよ。
 本来なら逆です(笑)。
 SS隊員がやってそうなことをソ連の公安が全部やってくれますので、意外に珍しいというか、ある意味貴重な映画ではないでしょか。あんまりこういうのは観たことがなかったです・・・。

 もちろんこれは脱走劇なので、主役のクレメンスはシベリアの猛吹雪の中を歩いて脱走します。前半は強制収容所の悲惨な実態を描き、中盤は過酷な大自然の中でサバイバルする主人公を描きます。

 映画全編を通してクレメンスは指名手配されている身なので、町に行くことも列車に乗ることもできない。東の最果てのシベリアからドイツに歩いて帰ろうとするのです。再び家族と再会するために。

 食べ物は買えない、ロシアの冬でその辺に食べ物があるはずもない。
観ててうんざりするほどの絶望的な逃避行です。クレメンスはハリウッドのような超人ではないので、さんざんヘマをやらかしますがその都度ロシアの現地人に助けてもらったり、タマちゃんを食ったりしながら歩き続けます。そして遂にイランに亡命して親類と落ち合うことができるのです。そしてドイツに戻って家族と再会して終了。(おれのじいさんもシベリアに強制連行されたそうなので感慨を持って見通すことができました。じいさんは生きて帰ってきましたが、義理の祖父はシベリアで死にました。遺骨は20年後ぐらいに歯が一本だけ帰ってきたそうです。)

 かなり長い映画で3時間近くあったような気がします。ラストは大変あっさりしておりましたが、随所に感動する場面が用意されているのでなかなかおもしろかったです。ただ前にもドイツの映画を観て思ったこととして
シーンの説明不足が感じられまして、それがものすごく惜しいと思いました。以下に謎なシーンを列挙します。

・意味わからないと思ったとこ その1
脱走直後、犬ぞりに乗って追いかけてくるソ連兵、主役は必死で走って逃げるも絶体絶命、荷物を投げ捨てて逃げる。しかし追いつかれたと思ったところでソ連兵は犬ぞりごと消えてしまう。夢落ちだったのでしょうか?でも荷物は逃げるとき捨てたところに落ちてましたが・・・意味不明。

・意味わからないと思ったとこ その2
イランに亡命する最後の国境の橋で追いついてきたソ連の強制収容所の所長。何故あっさり逃がしてくれたの?「私の勝ちだ」ってどういう意味??大体あの将校は3年もの間捕虜一匹を追いかけてるだけで給料貰えてたの??さすが社会主義!
滅びるわけだ。

・意味わからないと思ったとこ その3
まだ顔も見ていない赤ちゃんをどうして「息子」とわかったのでしょう?出征する場面では「妊娠したわ」と奥さんがいっただけだったのに。しかも家族との再開シーンでその息子が出てこないで終わるのはナンデ??!息子出せよ!!ラストが中途半端な気がするのはこのせいだぜ!!

・意味わからないと思ったとこ その4
どうしてあのユダヤ系ポーランド人はクレメンスをドイツ人と知りながら助けてくれたのでしょう?「理由は自分で考えろ」って結局よくわからないんですけど。ドイツ人を被害者として描く後ろめたさからの近隣諸国に対する配慮ではないかと思います(そーいう問題じゃあないが)。

 まあ、意味不明なシーンもたくさんありましたが、感動的なシーンもたくさんあり、それこそここでは書ききれないほどです。かなり良い映画だと思うのでクリスマス辺りに家族と一緒に見てください。何でクリスマスなのかは観ればわかるでしょう。久々にDVD買いたいと思わされました。

 そしてロシアの雄大な自然を存分に楽しむことができます。ロシアはでかい!そして美しい!更にソヴェト連邦がやはり
多民族国家だったのだなと実感できる作品です。モンゴルっぽい人から回教徒っぽい人からインド・ヨーロッパ系な人から純粋なスラブ系まで実に様々な「ロシア人」を見ることができます。大陸のふところの深さを堪能できるでしょう。

(余談ですがこの映画を作るにあたってロシア政府の検閲がちゃんとあったらしいんですけど、そこでのロシア政府の注文はもっとソ連兵を非道に描けというものだったという。本来なら逆の注文が来そうなものだが。やはりロシア政府にとってはソビエト連邦でさえも政治上の「敵」なのですね。それだけにソ連の収容所監視兵たちや公安の迫力はナチスのホロコースト映画のドイツ兵の迫力に勝るとも劣らない。マニアは是非観てほしいです。)


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