ワルキューレ

傑作

スリリング度 100
男気度 100
英雄度 100
総合得点 95



昔、「オペレーションワルキューレ」というこの映画と全く同じ舞台のドイツ映画を観た時、ドイツ人の悪い癖である、
民族無罪論(悪かったのはヒトラーや親衛隊でその他のドイツ人はヒトラーに騙された、躍らされただけ、むしろ被害者)が露骨に出ていたので、うんざりかつしらけた覚えがある(後年ミヒャエル・ハネケに論破されるわけだが)。まあこの映画は基本的には同じような主張が見え隠れしていたが、アメリカ資本の映画ですし、主演のトム・クルーズも別にドイツ人ではない。そこで妙に客観性というやつがこの映画には生まれており、娯楽映画としてもかなり優秀な良い映画になっていた。いや〜おもしろかった。今更ですがオススメします。

主役は今更言うまでもないが、ドイツの英雄、
シュタウヘンベルク大佐だ。この人をトム・クルーズが、やっているわけだ。これがなかなかハマっていて良かったね〜義眼で眼球が全然動かない様子などもうまく再現されていたように思う。 トム・クルーズみたいなハンサムさんがやるのはおかしいだろ?!って?おいおいシュタウヘンベルクははっきり言ってトム・クルーズより甘い顔をしとるんだぞ(笑)。
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甘い・・


つうか横顔似すぎだろ?!この写真はトム・クルーズじゃないんですよ


話はシュタウヘンベルクがアフリカ戦線で負傷し、その後国に帰ってヒトラーを排除しようと暗殺を画策しているグループに接触して仲間に引き込まれるところから始まる。シュタウヘンベルクは頭角を表し、いつしか暗殺グループのリーダー的存在となって行く。

あとは国内予備軍総司令官の
フロム陸軍上級大将をはじめとした、協力者の獲得が必須であった。ヒトラーに対する反乱抑止のために国内に残された精鋭の予備兵力2万名。これをヒトラー暗殺直後に動員令をかけ、暗殺の主犯をヒムラー率いるSS首脳部と定め、これを殲滅すること。こうして独裁者とその私兵を斃し、新しいドイツ政府の設立を宣言し、全ヨーロッパを破滅から救うこと。これがこの作戦の全容である。こう書くとこの「ワルキューレ作戦」非常に野心的で大胆で到底うまく行くはずがないように思う。鉄の忠誠を誇るSSをヒトラー暗殺の犯人にでっちあげるなんて荒唐無稽でさえある。しかし実際にこの作戦は成功直前まで行く。惜しくも失敗するという結末を迎えるのだ。この映画はその過程をものすごく丁寧に、スリリングに撮っている。結果は失敗するとわかっているが、それでも十分に鑑賞にたえる素晴らしい映画だった。

戦争映画ファンがこの映画を観ながら思い出すのは無論「日本の一番長い日」だろう。フロムの国内予備軍は言うまでもなくあの映画の東部軍である。
レーマー少佐ベルリン警備大隊はさしずめ近衛師団であろう。過程や結末も実に似た顛末を辿る。製作陣はこの映画を観たんじゃないかという推測は決しておかしなものではないだろう。かなり似ている。

フロムの積極的な協力を得られない暗殺チームは、
フロムを逮捕して偽命令を出す。国内予備軍は即座にナチ指導部の要人とSSの高級幹部を逮捕し、SS残兵を武装解除すること。軍隊は命令で動く。レーマー少佐は不信に思いつつもちゃんとゲッベルス逮捕に向かう。しかし…。

偽命令を出して最初は軽快に予定通りにことが進むが、徐々にほころびが見え始める。「ワルキューレ」ではその原因は
総統の暗殺失敗であり、「日本の一番長い日」では近衛師団の師団長殺害である。これらが露見することで双方の作戦はどちらも崩壊へと向かう。レーマー少佐は騙されていたことを悟り、一転シュタウヘンベルクの逮捕へ向かう。ヒトラーは健在ぶりをラジオでアピールし、偽命令は急速に効力を失って行く。そしてお仕事を始めるとドイツの軍人さんは極めて優秀である。シュタウヘンベルクをはじめとした国防軍のヒトラー暗殺に加担した軍人たちは次々逮捕され処刑されて行く。

その国防軍の粛清は極めて徹底的なもので、協力を渋っていた国内予備軍司令官のフロムも処刑(反乱計画を知っていたのに黙っていたからだそうだ)。次の国内予備軍総司令官はライヒスヒューラーSS(親衛隊全国指導者)ハインリヒ・ヒムラーの手に落ち、国防軍は完全に大戦の蚊帳の外に置かれ始める。SSは戦争末期に更なる権力の膨張をきたし、ベルリンが落ちるその日まで、国民に恐怖と暴力の抑圧の日々を約束した。

こう考えると、この映画は
末期ドイツの終わりの始まりを理解するのに大変重要な位置を占めていると思われ、かなりオススメしたい映画だ。トム・クルーズで言葉英語だけど他の俳優はお馴染みのドイツ俳優ばかりです、はい。吹き替えで観てください。トーマス・クレッチマン?出てますよ、当然(笑)。なんの役かって?誰あろうレーマー少佐です。相変わらずいぶし銀的演技でこの映画に彩りを添えています。他のキャストも良かったっすネ〜。

トーマス・クレッチマンはレーマー少佐だ。相変わらずビシッと決まっている。レーマーはこの反乱鎮圧中に二階級特進(ヒトラーの命令)し、大佐に。やがて最年少の将軍になる男だ。

そして偽だろうが何だろうが命令は命令。一度出された命令は死んでも遂行せねばならない。
この日本にもドイツにも共通する権力にひざまずく性質(綺麗な言葉で言えば忠誠心というやつだな)。アメリカ人やフランス人ではこんな偽命令で大規模なクーデターなんて考えられないだろう。あの時代、この命令に絶対服従のマゾ的気質で、日本とドイツは世界の半分を席巻したのである。
(偽命令を出すために師団長を殺さねばならなかった日本と、他の将軍が代理を名乗るだけで容易にそれができたドイツ。どちらが指揮系統がより厳格であったか、なにか物語っている気もするよね 笑)

シュタウヘンベルクは暗殺には失敗したが、ちゃんと妻と子供を国外に逃がしていた。つくづく男である。
家族を大事にしないヤツは男じゃないとカーツたいさ・・マーロン・ブランドも言ってたような気がします。ヨーロッパがKAPUTT(=くたばった)されるのを防ぐことはできなかったが(この後東プロイセンからベルリンまで赤軍にズタボロに蹂躙されてしまう。ルーマニアやチェコ、ハンガリー、バルト三国までのきなみ赤化しちまった)、シュタウヘンベルクの男気は我々も参考にせずにはいられないはずである。


奥様と。仲良さそうな写真です





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