>>戦争映画中央評議会

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悪童日記

ひどい時代のひどい話

 

退廃度

100

悪徳度

100

差別度

100

総合得点

85




2013年ドイツ・ハンガリー映画。

原作はアゴタ・クリストフの難解な小説で、映像化が難しかったとされている。

これは実に暗いヨーロッパらしい映画だ。
セリフも少ないし、何よりテーマが何かわからない。難解である。

テーマとか主義・主張とかはこの際置いておいて、ストーリーだけを楽しめばよいのではないだろうか。

舞台は第二次大戦末期のハンガリーの田舎町だと思われる。
はっきりハンガリーと明言していたかは忘れたが、言葉がハンガリー語だし、映画に登場する断片的な情報から間違いない、といえる。
例えば何でもないシーンの背景で「矢十字党」の腕章をつけた警官が歩いていたりする。こんな風景が見られるのはハンガリー以外にない。



物語はシンプルといえばシンプル。
戦争末期。親の都合で田舎に疎開させられる双子の兄弟が主人公だが、疎開した先は実のおばあちゃんの家だったわけなのだが、おばあちゃんはマツコデラックスそっくりの化け物ババアで、双子の兄弟を「雌犬の子供」と呼び、ただ飯なんか食わせないよ!と、マキ割りだの水汲みだの何でもやらせる。


どうみてもマツコなおばあちゃん

戦時で親がいない過酷な環境で、飯も少ないし寒いし人心は冷たいしでツラいのだが、世間の厳しさに負けないよう、双子は奇妙なトレーニングを繰り返す。

出征する前の父親が「何でも書きなさい」とくれた雑記帳に、双子たちはその意味不明なトレーニングをありのままに書き込んでいく。

双子は徐々に人間性を失い、異常行動に走るのであるが、それが生来のものなのか時代が悪かったのかは映画をみただけではよくわからなかった。

こういう戦時の異常性が子供のマインズを直撃するという映画は過去にも割と作られており、「ブリキの太鼓」「禁じられた遊び」など関連作が浮かぶ。こじつければ他にもいっぱいあると言える。

まあ、色々あるのだろうが、ここは戦争映画サイトであるため、時代背景の解説と、場面との整合性を主に読み解いていきたい。

1944年といえば、ハンガリーはひどい時代(参考リンク:ハンガリーのホロコースト)である。もともとハンガリーは枢軸国で、ドイツに逆らえない状態であった。

しかしハンガリーには欧州に有数のユダヤ人コミュニティーが存在しており、この時には戦争に負けるとわかっていたヒトラーは、負ける前にハンガリーのユダヤ人を片付けておこうと思ったのかもしれない。

春にドイツ国防軍が国境を越え、ハンガリーはあっという間に占領されてしまう。無血開城に近い有様で、ハンガリー国民は無批判にナチを受け入れた。それどころか、ドイツ人も真っ青の反ユダヤ主義が存在していたハンガリーは、「矢十字党」なる親ナチ極右組織が実権を握り、ハンガリーに住まう45万人のユダヤ人はいつでも殺される危険があったのである。実際に30万人は最初の数か月でアウシュビッツにピストン輸送され、急速にガス殺されたといわれている。

その後もユダヤ人に対する粛清は続き、残ったユダヤ人たちも息絶えようとしていた。「矢十字党」や暴徒の群れはユダヤ人を見つけ出しては銃殺し、凍り付いたドナウ川に投げ込んでいた。追い打ちをかけるように冬には赤軍が到来し、守るドイツ・ハンガリー軍と攻めるソ連・ルーマニア軍とででブダペスト包囲戦が始まる。赤軍と枢軸軍の戦死傷者数は30万人を超えたといわれる。結局あとに残ったのは黒焦げの都市の廃墟と真っ赤に染まった人民政府であった。

もう映画がどうのというより、この時代がシドい。そうは言えないだろうか、、
その点この映画は、ユダヤ人の移送が急にひどくなる瞬間があって、そのワールドダウンフォールな感じがすごく好きだなあと感じた。




実際移送が一番活発だったのは春ごろなのだが、この映画はちらつく雪の中を強制連行されていくユダヤ人の列に、市民が罵声を浴びせかけたりいじめるわけで、その”絵”が躍動感があっていいわけよ。
ああ、、素敵、、と思ってしまいました。

双子に優しかったブロンドの姉ちゃんが、バターをたっぷり付けたパンをユダヤ人たちにみせびらかすのよ。陰険に。食べたい?ダメよ、あげないわ、、ってねえ。さもうまそうにねえ。この差別の陰険さは不謹慎かつ素晴らしい。こういうのを待っていた。


他人の不幸は蜜の味よ〜ん 人間なんて何百年たとうがこんなもんよ

「矢十字党」やハンガリー人の蛮行を描いた映画は少なく、イタリアのテレビシリーズ「戦火の奇跡 〜ユダヤを救った男〜」が最もストレートにハンガリーでのホロコーストを描いている。

その点この映画はハンガリーという国がハンガリー語で描いたハンガリーのホロコーストということで、画期的と言える。
なかなかこういうのはなかったんだよね。まあホロコーストの場面は断片的で、これを戦争映画と言えるかは謎ですが、戦時映画ではあると思います。

また、要所要所で意味ありげに登場するシュトゥルムバンフューラー(SS少佐)がまたいい感じだ。収容所の司令官でどうもゲ×のようだが、詳細は語られない。

今の時代はゲ×は変態性欲ともいえないけど、当時は紛れもなく”異常”だったわけで、、

「ソドムの市」や「慈しみの女神たち」的退廃を感じさせ、気持ち悪くて存在感があり、良かった。
「矢十字党」の警察本部でボコられる双子を助けに来るなど、悪徳のシンボルのSS少佐に救われる双子、、という絵はどうもな。この双子も善なるものではない。我々にそう直感させる寒々しい演出であった。グッド。

地獄から来たロビン・ウィリアムスといった顔の親衛隊少佐

ラストは戦争が終わって何が何だかわからない終わり方。
あんなに会いたかったはずのパパにママ。双子の別離。難解だ。とりあえず原作は読みたくなったので手に取ってみたいと思う。




 

 

 

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