エンジェル・オブ・ウォー

ウクライナの悲劇

救いのないストーリー 100
子供実験度 40
ウクライナの悲しい歴史度 100
総合得点 75

2013年ウクライナ映画。

ウクライナにあったというナチの子供収容所が舞台となっている。
双子、人体実験…ううう…たまらない。。

しかし一般的にはエンジェルオブウォーというなんのひねりもない邦題、前後編二本立てという敷居の高さ、ウクライナ製作というわけのわからなさ。あらゆる意味でなかなかみる勇気が起きない映画かもしれない。

実はこれも
全四話のテレビシリーズであり、一話一話で起伏や盛り上がるがちっとはあるのでただ長い映画とは一線を画す。結論から申しあげますと、これはけっこうな当たりで、軍事的描写のディテールに不満はあるがそれでも観てよかったと思えるでき。そもそもドイツとロシアに挟まれちゃった国の不幸な歴史マニアのワタクシにはこの設定でウクライナ産と言われれば飛びつくしかない。とても楽しめた。

"アーリア化"のため、金髪や双子の子供の血を抜いたり人体実験にかける。アーリア化できそうな子供たちを拉致してドイツ本国に送り、"生命の泉"(Lebensbornレーベンスボルン)協会を経て子供を欲しがる親衛隊の家族に里親に出す。

長く苦しい戦争が続くと、双子を作り出そうとしたり、他民族をドイツ化しようとしたり、
遮二無二人口を増やそうとしたナチスドイツ。でなければ巨大なロシアに対抗できない。事情はわからないでもないが、ほんとに馬鹿げた愚行である。アホちゃうか。ドイツ人は賢いのかバカなのかサッパリわからない。

「ボタン穴からみた戦争」という本に、ベラルーシの子供達がナチにどんな目にあわされたかという話をドンブリいっぱいゲップが出るほど読むことができるが、その中にも金髪の少女の血を死ぬまで抜き続けたナチのキチガイ衛生班の話がのっている。ええと・・確かこれだ。

ラーゲリ(強制収容所)である朝、妹が連れて行かれました。妹は金髪の巻き毛で青い目でした。ドイツ軍は金髪の子供だけ集めて登録していました。
ドイツ兵は妹の頭をなで気に入っていたようでした。妹は朝連れていかれて夕方帰ってくるのですが、日に日にやつれていくんです。お母さんが色々問いただしても妹は何も答えません。
何かで脅したのか、薬を与えられたのか、妹は何も覚えていませんでした。後になって子供たちは血をとられていたのだと知りました。きっとたくさん採られたのでしょう。
数ヶ月たって、妹は死にました。

これはベラルーシの話しだが似たようなことが行われていたのだろうな、というのは容易に想像がつく。

ナチから言わせれば東欧人種は基本的にウンターメンシェ(=下等人種)だが、金髪で美しい人間が多いのも事実。興味深い研究材料だったのか?それに比べてヒトラーもゲッベルスもヒムラーもパッとしない平凡な容姿である。
なぜこんな矛盾に満ちた教義を最後まで信じることができたのか、東洋人のおれには全く理解できない。

さて、ストーリーは双子収容所から双子の片割れが逃げ出し、これをナチ占領当局の忠実なしもべとして恐怖の執行機関となっていたウクライナ補助警察(ヒルフスポリツァイ)が秘密裏に捕らえようとするところから始まる。
SDが本腰入れて出てきちゃう前に何とかしないとまずいんだべ…と焦るヒルポは、凶暴なウクライナ人警官で猟師の青年に子供の捜索を依頼。青年はあっさり子供を発見するが、実はこの青年はウクライナで活動するパルチザンのスパイであった。子供はパルチザンに預けることにした。するとその子供は偶然にもパルチザンの隊長の息子であった(笑)。隊長はもう一人の片割れを助け出すため執念を燃やすが…

とまあ、テレビシリーズだけあってストーリーはご都合主義に満ちているが濃密濃密。

見所はウクライナ補助警察の人間模様。こすずるい子悪党に、勝ち馬に乗ろうとする出世主義者、流されてるだけの凡庸なヤツ、イヤイヤ占領当局に協力してるだけの善良なヒト…いろいろだ。これは物語をスリリングにしている。彼らも一枚岩などではなく、むしろかなり仲が悪いわけである。反目しながら子供を追って行く。その卑怯で余裕がなくて手段を選ばない感じは涙なしにはみれない。ドイツとロシアに挟まれちゃった国はこうやって生きるしかなかったんだ。。

それをウクライナ人が自分でやったのだから、偉いよ。自国の戦争犯罪を認められない国が多い中で、これは本当にすごいことなのだ。

男は汚れ仕事やらされ女は売春やらされ子供は人体実験
…最悪すぎる。極悪非道なSDの占領政策には言葉もない。現地人を利用して直接手を汚さず甘言を弄して搾り取ろうとする。ドイツ人の得意技である。

最後はパルチザンが蜂起し、悪いナチの収容所にかちこむわけだがこの辺のご都合主義に満ちた展開と稚拙な軍事アクションには閉口した。まあチープなのは確かだがそれでも見所豊富で楽しめる。

演出面では寒々しいウクライナの森林が主舞台となるためか、すごくさびしくて暗いストーリーとマッチしている。音楽もとても悲しげで美しい。ウクライナはネオナチが多いと聞いたが、この話ではドイツ人はどうしようもないぐらいの悪役。拾うところ一つなしの極悪愚連隊だ。だが同時にボリシェヴィキに粛清ぶっこまれたウクライナ人のソ連ヘイトも少なからず語られており、
ドイツとロシアに挟まれちゃった国のどうがんばっても幸せになれない感じが最後の最後のセリフにまでいかんなく噴出している。ぜひみてほしい。

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