>>戦争映画中央評議会

アルマジロ アフガン戦争最前線基地

リアルすぎるがゆえにダルイ

 

ダラゆる度

100

リアル度

淡々度

100

総合得点

70


2010年のデンマーク映画。

ドキュメンタリーである。戦争映画で戦闘シーやもろもろの演出がリアルであることは大事だが、戦争ドキュメンタリーはどういうわけだか、基本的にダルい。。もちろん演出面で優れたドキュメンタリーはあるのだが、ドキュメンタリー映画の弱点は、やはり感情を揺さぶる力が劇映画に比べて劣るということだ。

 

この映画はかなり個性的で、ドキュメンタリー映画なんだが、劇映画に見えるように演出されている。俳優がいて、台本通りに演技しているように見える。カメラワークや編集の巧みさがなせる技なのかもしれないが、こんなのは初めて観たのでそこは素晴らしいなと思ってしまった。

ただ残念ことに銃撃戦のシーンは、肝心の場面が全然カメラに映っていないのである。本物の銃撃戦なんだからどんどん前に出てれば狙撃されてしまうわけだから、腰が引けてしまうのは仕方がない。だが、この映画、基地で会話してるシーンなどは劇映画に見えるよう巧みに演出されているが、戦闘シーンに関しては音だけが景気良い報道番組とまったく同じで、すごく退屈である。状況もわからないし、後に残ったタリバンの死骸だけがモザイク付きで写されるわけで、そんなもん観てもちっとも楽しくないし、嫌な後味でストレスフルな映像である。

本物の戦闘シーンを兵士の真横で撮った命知らずな映像は、兵士たちのプライベートカメラなどで撮られたものがあり、これは案外海外の動画サイトなどを巡っていれば簡単に観れるので、この映画の立ち位置は微妙だ。ことわっておくが、本物の戦闘シーンなんて大して楽しいものではない。例えば、携帯ロケット弾の発射映像があったとして、速すぎて肉眼ではとらえられないし、どこに着弾して誰が負傷したのかなど、劇映画と異なり謎のままで終わることが多く、何も楽しいことはない。スプラッター映画が好きでも、本物のスナッフ映像を楽しめる人は稀だと思うし、リアリズムが大事でも、本当に本物になってしまえばいいというわけではなく、客が退屈しないようなダイナミズムや演出がなければ映画は映画たりえないと思うわけである。というわけでこの映画は、全部本物の映像なのは確かだし、劇映画風に演出しているのも確かだが、だからと言って高評価に直結するわけじゃないということだ。

ストーリー?はアフガニスタンにおけるデンマーク軍の平和維持活動ということで、タリバンとの弛緩したゲリラ戦を撮っている。本当の戦場とはエキサイティングなものではなく、圧倒的に長い待機時間、別に敵と出くわさないパトロール、しょっぱい訓練など、すごく退屈でつまらないものだという。この映画はその退屈な感じもすごく表現できており、リアルすぎる(というか本物)の戦場をカメラに映している。何度も言うが、だからといってこの映画が楽しいわけではない。

関連作として、ボスニア紛争で平和維持軍として出征したデンマーク軍のお話「フォーリンフィールズ」という映画がありましたね。この映画は完璧に劇映画だが、淡々とした演出やセリフの少ない典型的欧州映画で、本物に見せた偽映像ということでは「アルマジロ」とは正反対なのだが、ダルさは酷似している。見比べてみるとおもしろいかもしれない。個人的にはどちらもダルくてあまり好きではない映画。「フォーリンフィールズ」のほうが見せ場があるだけまだマシか。なかなか観辛い映画だと思うが、興味があればどうぞ。

戦場を経験したものは、たとえ生きて帰国できても高確率で戦場に舞い戻ってしまうという。それは戦場には平時では得られないような、強烈なエクスタシーがあることを示唆している。そこまでカメラに映すことができていれば。この映画はどんな戦争映画もかなわない神作となっただろう。いろんな意味で惜しい映画だ。

 

 

 

 

 

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