ボスニア

ボスニアの作ったボスニア紛争の映画

男の背中度 100
悲劇度 100
反戦度 100
総合得点 85

ボスニア紛争の概要をセルビア人側から描いた稀有な映画。ボスニア紛争ではセルビア人による、クロアチア人、ムスリム人への非道行為が世界中で糾弾されたが、これはセルビア人を悪に仕立てることがNATOにとって都合が良かったからであり、決してセルビア人だけが加害者だったわけではない。もちろんセルビアもひどいことをしたが、それは3勢力どれも同じだった。そこがボスニア紛争の悲惨なところなのである。

これはムスリム人とセルビア人の2人の主人公が平和に仲良くやっていたのに、戦争でお互いを憎むようになってしまった悲劇を軸に、親友さえもひきさかれ殺しあった悲惨な戦争の実態を鋭く抉り出す、かなり高等な反戦映画だと思った。
話もおもしろいし、戦闘シーンも激しいと思う。この映画では主にセルビア人とムスリム人の2勢力にあえて絞ってみせることによって、紛争の概要をわかりやすくしていると思う。ここでクロアチア人まで引きずり出したら話が複雑になりすぎて悲劇が伝わらなかっただろう。

この映画の魅力は話もいいが、個性的な登場人物たちにある。彼らの人間性の説明に一切の妥協がない。彼らはお世辞にも容姿端麗とは言いがたいので、ハリウッドの美形たちに比べれば感情移入はしにくい。しかし、それぞれの人物像を戦闘シーンと交錯させて少しづつ見せることによって、映画の後半に行くほど彼らが好きになっていくだろう。だから映画の最初の方では特別感情移入はできないのだが、騙されたと思って最後まで見てほしい。男たちの友情と悲劇の重大さがラストに近づくにつれ膨張していき、最後には爆発してその後にはぐったりしてしんみりしてしまう、そんな映画である。

あまりにも悲惨なシーンが楽しげなロックやテンションの高い登場人物たちによって楽しげに語られる。逆にそれが救いようのなさを強く感じさせる。ラストも思いつく限りの最悪のものである。同じボスニア紛争を描いた「ノーマンズランド」と続けてみることによって、ボスニア紛争が遠いことのようには思えなくなる。どちらも反戦映画としては超S級である。
政治的立場もそうとう公平に筆致されている。かなりお勧め。

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