>>戦争映画中央評議会

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独立機関銃隊未だ射撃中

ソ満国境の終戦

愚直度

100

絶望

100

徹底抗戦度

100

総合得点

80


62年日本映画。
戦時中に書かれた戦意高揚小説「独立機関銃隊いまだ猛射中」からタイトルをインスパイヤーされた(パクリ?)と思われる本作だが、同小説とは異なり、本作は厭戦映画に仕上がっている。



1945年8月、ソ満国境地帯。圧倒的物量で押し寄せるソ連赤軍を食い止めるべく戦う、重機関銃トーチカ「キの3」の姿を描いている。

重機関銃といっても、評価は真っ二つに分かれる九二式重機関銃が一挺あるのみである。九二式重機関銃は当時の諸外国が運用していた機関銃に比べればたいそう発射速度が遅く、よくキツツキに例えられた。しかし、一発一発を大事にする(?)日本帝国軍にとっては合理的な兵器であった。しばしば照準眼鏡を用いて狙撃も可能であった。現場兵士からすれば、故障は少ないし※狙いはつけやすいし、独特の発射音が戦意を高揚させた、という声もあり、決して評判は悪くなかったらしい。

※諸説あり

とはいえ、九二式機関銃は日中戦争開始時に実戦投入された兵器で、新式の九九式軽機関銃が、太平洋の戦場でアメリカ海兵隊を相手にそれなりの戦果をあげていたことを考えれば、やはり日本軍らしい、どこか精神論に頼った旧式兵器であることは否めない。(日本軍の機関銃運用はかなり優れていたらしいです。兵器の不足を人で補うという姿勢はここでも見られるということです)

これがたった一挺あるのみで、徐々に不気味に姿を現すソ連軍の影。制空権もなく、連絡も遮断されたトーチカはまさに単なる「点※」。鬱々とした棺桶にも思える。

※トーチカ=ロシア語で「点」

戦況もわからずどんどん激しくなっていく敵の砲撃。やがて闇夜を切り裂く多連装ロケット砲「スターリンオルガン」、無言で疾駆してくる「スターリン戦車」IS3重戦車(劇中は兵士が「ベーテー戦車」と呼ぶあたりがマニアック)が登場。戦力は大人と赤ちゃん。

ベルリンを制圧し、歴史上最も強かった頃のロシア軍が相手である。中国に苦戦していた田舎軍隊に勝ち目はない。

しかし、それでも現場に踏みとどまり、愚直なまでに命令に服従し、戦い続ける兵隊の姿は、残された国民にとって誇りである。そして彼らのような優秀な兵たちを捨て駒にして使い捨てた参謀本部のお偉方には、はっきり怒りを覚える。

この映画は反戦映画だが、昨今の日本映画が容易に陥るストレートな反戦メッセージはほとんどない。現場のありのままの姿を見ているだけで、戦争の恐ろしさがわかるようになっている。

劇中の現場の兵隊は、当時特有の鈍感さ、能天気さで悲惨な戦況も笑い飛ばすかのように勇ましく戦い、よくある反戦映画のようにメソメソ泣いたりはしない。ここがとてもリアルである。戦場のど真ん中で泣いたり、降伏を議論するのは「ザ・平成の感覚」で、現場将兵には基本的にそんな態度はありえなかった。だからこそ、日本軍将兵の死傷率は飛び抜けており、ほとんどが死ぬまで戦うか、自決した。大本営はそれを頼りに作戦を立てていたのである。

しかし、砲撃で指揮所が吹っ飛び、自分たちのトーチカが孤立すると、敵陣からプロパガンダ放送が始まり、降伏の勧告が行われ、兵士たちの士気は急落。究極の決断を迫られる・・・自決か継戦か・・・それとも降伏して売国奴の汚名を自ら纏うのか・・・

普通なら降伏するだろう。だが、繰り返すが、彼らはそういう軍隊ではなかった。この映画は敢えて、普通はあり得なかった議論を登場人物たちにさせている。そうでもしなければ、なぜ兵士たちがここまで戦い続けるのか、我々にはさっぱりわからないからである。(解説にそう書いている)

ラストは「西部線異状なし」にそっくり。

出演俳優や監督、脚本家は軍隊経験者であり、軍隊の中身の描写はとてもリアルである。再版されたDVDはとても画質が悪いのが残念だが、是非観ておきたい日本の名作戦争映画の一つである。


 

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