ドレスデン ~運命の日~

ドイツ版パールハーバーのような映画

パールハーバー度 100
うそ臭い恋愛度 100
戦略爆撃度 70
総合得点 70


1945年2月13日、ドイツ東部の芸術の古都ドレスデンがイギリス空軍の猛爆撃を受け、一夜のうちに壊滅した。

東部より迫り来るソ連軍を支援しつつ、イギリス空軍の力を見せつける目的があったとされるが、巻き添えを食った民間人は
35000人にのぼると推定される。

ドレスデン大空襲はアメリカ空軍も参加したが、もっぱら都市を焼き尽くしたのはイギリス空軍によるものであった。イギリス空軍のドイツ爆撃によるパイロットの戦死者70000名。彼らもギリギリであった。

それほどの犠牲を払ったがドイツは降伏する素振りすらみせず、50000トンもの爆弾を消費しても戦略爆撃で戦争を終わらせることはできそうにない、とイギリス軍側にも厭戦気分が漂い始める。これは"バトルオブブリテン"でドイツ空軍が感じたものと似ているのではないだろうか。

だが、イギリス空軍爆撃機兵団司令官
アーサー・ハリスはかねてより計画していたドレスデン大空襲を実行に移す。

ドレスデンは火災に弱い構造で道が狭く、難民がごった返し100万人近くの人々がひしめきあっていた。しかも高射砲は東部戦線に引き抜かれ、戦闘機も出払いほとんど無防備に近い状態。ここにイギリス空軍の爆撃機が殺到し、一晩で2600トンもの爆弾を落としていった。これは東京大空襲を凌駕する数値である。

英軍は意図的に火災旋風を引き起こし、効率的に人々を焼き殺す最高の舞台として、このドレスデンを選んだのだ。この映画で描かれる以上に英空軍は超極悪だったのである。ドイツはもっとそれを声を大にしても良かったはず。遠慮しまくりで気の毒であった。それほど自分たちを被害国として描くことの難しさがあるということか。

この映画はドイツが総力を結集した映画で、制作費1000万ユーロ(これはドイツ映画としては桁違いの数字である)。また、戦後60余年、常に悪役として戦争の被害を語ることを許されなかったドイツ人にとって政治的に大変難しい映画といえた。自分の国だけを被害国として描けば世界から大ブーイングを受けるのは必至である。さあ、ドイツはこれをどんな映画にしたのか。

ストーリーはイギリス空軍将校とドイツ看護婦の恋愛話が軸となる。
ドイツの都市を灰にするという仕事。これを黙々と行う爆撃兵団の将兵が主人公なのである。普通なら悪役にしかなりそうにないキャラクターである。

主人公の英軍将校はドイツ軍機による迎撃により不時着を余儀無くされた。不時着した場所は第三帝国領内だ。捕虜の扱いはジュネーブ条約によって保証されるべきだ、、などと都市を灰にするという最悪の戦争犯罪を実行していた彼らがそんな
寝言言ってなんになるというのか。仲間は現地民によってリンチを受け、主人公はそれをみて逃げ出す。ドレスデンの難民に紛れ込むのである。

そこで出会った看護婦と恋に落ちるのだが、そこに英軍爆撃機兵団が殺到するという話である。

恋愛してたら敵軍が爆弾たらふく抱えて邪魔しに来るという構成は、かの
「パールハーバー」を連想させる。ほとんど同じである。


ポスター似すぎだろ(笑)

この映画は確かに恋愛パートは文化の違いすら感じさせるほど共感できないものである。都市を灰にする仕事をしていた敵の英軍将校に、結婚間際の幸せな看護婦があっさり恋に落ち、人目もはばからず光速ファックしてしまう。

おいおい。。

いやいやこれはマジか、、
いったいどういうことだ、、

普通自分の国を爆撃してる奴にそんな一瞬で惚れるかあ?おかしくねえ?ドイツ女はそこまで常識がないのかねえ。なんで惚れたのか??劇中特に説明もなく、顔がいいから、としか言いようがないわけよ。

だいたい英軍将校はドイツ語喋れなかったはずなんだが、だんだん普通にその辺の人たちと会話できるようになってしまうのである。この辺もご都合主義というしかない。

なんでこんなことになってしまったのだろう?

それは冒頭述べたドイツ側のしょっぱい政治的立場がある。
自分らを全面的に被害国として描くわけにはいかないんだ!イギリスにもやむを得ない事情があった風なことも描かないと!ああ!ユダヤ人迫害の様子もちょいエグめに入れといて!恋愛はイギリスが男!ドイツ女はドイツ男よりイギリス男を選ぶようにしといて!えっと!理由は適当に考えといてよ!とにかくドイツ人はダメっぽく描いて!

敵兵を匿ったヤツは銃殺だぞおらー

そんな製作陣の声が聞こえるようだ。メイキング映像みてても政治的に中立になるように描こうと苦心したのは確かなようである。確かに一方だけを悪く言う感じではない。でも
ここまでコントロールされた中立さというのは一体どうなんだろう…?これはこれでプロパガンダになってしまうのではないだろうか?

日本の反戦ドラマよりは大人向けか、とは思うが、これはこれで努力しすぎだろ、と思う。ほんとにお国柄なのか思いつめたら一直線だな。。

あと、この性急な恋愛模様だが、「トンネル」という東ドイツと西ドイツの脱走もの映画があったが、これに似てるよなあ。あれも確か婚約者と死別した女性がエンエン泣きながら別の男のチンポにむしゃぶりつくのである
(ほんとなんだよ!)。すごすぎる。発想が我々と違いすぎる。ほんと文化の違いだな、と考えていたところで両映画の監督が同じであることに気づいた(笑)。

ん?む。文化の違いなのか監督の趣味なのか、、それとも政治的計算か、、まったくわからない。とりあえず現実味は感じられなかった。

ドレスデン爆撃のシーンが最大の山場であるが、これも爆発シーンがショボすぎてガッカリした。重爆に焼夷弾にナパーム弾が投下されたこの大空襲。地下壕にこもってドドーンドドーン…という音が近づいたり遠のいたり、という感じで爆発シーンは大幅に省略されている。音が消えたから外に出てみたら大火災!
もう爆撃は終わっているのだ。制作費をふんだんにかけてもやはりここは限界があったようである。ちなみにドレスデンでひどかったという火災旋風のシーンは一切なし!

火災のシーンは確かにすさまじいのだが、爆撃とは子供も老人も肉塊と化し、女を灰にし、地下壕に逃げた人々も急性一酸化中毒で窒息死させてしまう。この中でキッチリ表現されていたのは窒息死だけであった。あとは少し爆死するゴア描写もあったものの、ちょっと悪いこと企んでたおじさんで、まるで天罰であるかのような描き方であった。

あとは死の恐怖に怯える人々の集団自決のようなシーンがジックリ表現されていた。だが残酷なのはそこまで。最後はバッドエンドなのかハッピーエンドなのかサッパリわからない終わり方ではあるが、無言になることは間違いない。

しかしこのように都市空爆をおおがかりにフィーチャーした映画はそんなにはない。日本には「はだしのゲン」や「黒い雨」などがあったように思うが、あまりやりすぎると、
「おまえらが戦争をはじめたんだろバーロー」と言われてしまうからか、最近は多くないように思う。

この映画は???と思うところは数あれど、基本的には名作と呼べるできであり、都市空爆を扱った映画としては決定版と言えるだろう。まあ、「ランボー 最後の戦場」におけるビルマ軍の擲弾筒による砲撃シーンの方が100倍は迫力があったことは強調せねばなるまい。



戻る