永遠の0

戦闘シーンはよかった

空戦度 90
歴史考証度 80
ウェット度 100
総合得点 80





久々の日本産戦争映画の話題作。
岡田准一が主演なので、観る前からなにかと不安があった。

サザンが主題歌を手がけており、なんだかそれもあって某YAMATO映画を思い出させられる。

ドッカンドッカン演出ラッシュで、
泣かせます!泣かせます!特攻隊員は崇高です!と特攻を美化しまくる映画なんじゃねえのかと思わざるををえなかった。

まあ散々CMで岡田くんが
「どんなに辛くても!生き延びる努力をしろ!」と言っていますし、これはほんとしつこく何度も何度も聞かされたので、要は特攻美化のジャパニーズネオナショナリズムなんだけれども、命大事の戦後民主主義と結びついた感じの価値観をガンガン押し付けてくるのだろう。また説教されるんだろうな、と暗い気持ちで鑑賞にのぞんだ。(カミさんが岡田准一のファンなのでおれは付き合わされて観たのだ)

最近、ナショナリズムが日本でも猛り狂っており、映画ではかつての戦争を美化するという形で表現されることが多い。だが、あんまりストレートに美化すると北朝鮮臭がひどくなるし、当時の大日本帝国の死生観に関しては流石に全面的には同意できない。
そんなヌルい日和見によって似たような中途半端映画が大量生産されている。このことを否定できる人間はいないはずである。

さて、前置きが長くなったが、この映画はいつもの日本映画のダメな感じが遺憾無く噴出している。とにかくウエットなのである。悲しげな音楽だの家族との別れのカットだの、大の大人がひっくひっく泣く姿など、とにかく泣かせようという執念を感じる。こういうのは大画面に騙されて大したこともないのになんか泣いてしまう。そういった経験のあるの人も多いはずだ。

演出過剰。この一言に尽きる。恥ずかしいぐらいだ。ラストシーンなんて笑ってしまったぐらいだ。

戦闘シーンはかなりの迫力で、及第点。真珠湾攻撃にミッドウェー海戦、ソロモン海戦に菊水作戦。全部やる。まあしかし、それをタップリみせてくれれば良かったのだが、
いちいちいいところでぶっつりきれては、場面が切り替わり、到底満足できないようになっている。これはせっかく高い技術で当時の空戦を再現することに成功しておきながら、自ら手足を縛っているようでもどかしい。話が広すぎる。律儀に開戦から終戦までダイジェスト仕様でやってしまうという日本映画の悪癖をこれもしっかりなぞっている。

短いが戦闘シーンはとても良い。だから残念という以上にもどかしい。もっとただ単純に殺し合いをみせてほしかった。戦争なのだから。殺し合いが本質である。
美しい物語など必要ない。おれがこの映画に言いたいことはそれだけである。

人はこの映画をみてこう言うだろう。
「先の大戦で犠牲になった多くの人々の命の上に、我々の今の暮らしがある」と。

この映画も某YAMATO映画もその他のあれこれも、こう思うしかない。これ以外の感想が浮かばない。どんな崇高なお題目でも、
感想が一つしか浮かばない映画というのは邪悪である。それはプロパガンダであり、国民を啓蒙しようというどこぞの誰かの意思が強く作用しているのだ。

映画は娯楽であるべきだ。おれはこんな徹頭徹尾情感に訴えかけるこのような映画を上等だとは思わない。

この映画で良かったところは、軍事考証がなかなか緻密で正確であること。薄汚れて傷だらけで塗装のはげた零戦を使っていたり、二十一型、五十二型と型式にこだわる姿勢はハリウッドのパールハーバー系シネマには不可能な表現。ミッドウェー海戦のやられっぷりも正確。日本海軍のバタバタぶりを慌ただしく表現し、その隙をつかれて急降下爆撃を喰らうという流れだ。その惨劇の凄まじさは劇場でみてると言葉もないぐらいである。悔しさに涙がにじみ出る。

空母「赤城」の再現度は軍事オタクでも納得するであろう

また紋切り型理想通りのジェントルメンな海軍士官もいれば(無論、これは岡田准一である)、極道に片足突っ込んだやさぐれ士官もいるし、バカ正直ナショナリストもいれば、世間体に追い立てられて部下を死に追いやることしか知らん無能将校も出てくる。人間模様様々で良かった。

おれがグッときたのは、そのジェントルメンな主人公が直掩機を操って教え子の自爆作戦を援護するシーンがある。大事な教え子が、次々と空母に突っ込んで行く。
だが自爆作戦は一つも成功しない。要は迎撃されて次々と若者たちは無駄に死んでいく。それも壮絶に。爆散し、海に散らばる黒焦げの残骸。これをみているしかない岡田くん(直掩機には弾着観測のような仕事もあるのでこれをしっかり目を背けずにきっちり数を数えなきゃならない。岡田くんの苦悩は想像するに余りある)。これは大画面でみていると、「これよ!これこれ!これがみたかったのょ!」と思った。二時間これをやられれば、おれはウエットな演出の数々、全部蛇足になると思う。そしてその映画は特攻映画の金字塔と呼ばれるようになるだろう。まあ日本映画には永遠にこんな映画は作れまい。右にしろ左にしろ、歪な思想を映画に乗せずにはいられないお国柄なんだ。それほど過去の大戦の爪痕は我が国をひどく蝕んでいるのだろう。色んな意味で惜しい映画である。

 

 

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