ヨーロッパ

評価が難しい


白黒度 100
地味度 100
??度 100
総合得点 50

変態うつ病監督、ラースフォントリアーの91年公開作品れす。

まあこの監督の作品を一個でも観たことある人にはもはや言うまでもないことだが、とにかく
根暗ですよ。暗いです。暗い映画ばかり作る監督です。

もはや
「ミスター・デプレッシブ」…いや、違うな、「ザ・鬱」とかはどうですか?「落ち込みキングダム」とかはどうでしょう。

は?

まあいいです。
映画の話をしましょう。
これは戦争映画じゃあないです。

じゃあなんでこんなところでイタいレビューをさらさなきゃならないのでしょう?

でも仕方ねえんだよ。

なにしろこれは人狼部隊が出てきますので。(新城直衛調に)

はい!押井守を連想した人!
あんたの負けです(?)。

人狼部隊というのはかつて本当に存在していました。

ナチスドイツ崩壊後、ベルリンで暗躍した実在の秘密部隊です。
どこでもやっぱこういうのがいるんですね。

名前は勇ましいですが、構成員にはヒトラーユーゲントの
クソガキがたくさん混ざっていたそうで、つまるところ組織力もたいしたことない烏合の衆である。

話は、ドイツ系アメリカ人が、敗戦後のドイツにやってきて復興の一助になりたいと車掌の仕事を始める。

だが人狼部隊の工作員が接触してきて、いつのまにかテロ活動の共犯になっちまうという話だが、実にアートチックな映画になっている。

映像表現が独特で、催眠術士のようなモノローグが入ったりとか、
ギャスパーノエみたいなバーンと画面いっぱいにブロック体が表示されるだとか、意味わからんな、すんません。

つまりあれだ。なんか芸術家きどりな映像がたくさんぶち込まれてるんだよ。白黒映画だけどいつのまにかカラー映像になってるだとか…

典型的アート映画。

戦争映画好きのための見所は人狼部隊で正に子供が出てきて、要人を拳銃で射殺するなんてシーンがあるが、これは人狼部隊が起こしたゲリラ攻撃で似た事件が実際に起こっている。

主役に接近してくるドイツ美人は、実は人狼の工作員で、アメリカ国籍の主人公を利用しようとしている。主人公は全く気付かず婚約してしまう。米軍将校にはナチの情報を探れと頼まれるし、板ばさみになって大混乱。色々な人々に手前勝手に利用され、婚約者の愛情も信じられず、
主役はヤケクソになってしまう・・。

ヨーロッパの複雑怪奇な人間模様はアメリカ人にも日本人にも想像がつかない。ヨーロッパは陸続きの国々であり、
騙しあい化かしあいに秀でていなければ生き残ることは出来ない。そういう宿命を背負っているのだ。理想に燃えた正義漢だったはずの主役はこの複雑さの前にへとへとに疲弊してしまったのだ。

象徴を重んじるドイツ人と、合理性を重んじるアメリカ人・・靴磨きのエピソードは秀逸であった。
ドイツ人の車掌は磨いた客の靴底にチョークで’しるし’をつけるのを好む。アメリカ人は磨いたかどうかなんてみればわかるじゃないの、と困惑する。

象徴を重んじるドイツ人はハーケンクロイツというシンボルを許した。ナチを偶発的な災厄ととらえることを許さず、ドイツ人の民族性に責任の所在を求めているのだろうか・・?しかし監督のラース・フォン・トリアーは「ヒトラーに共感する」発現でカンヌを追放された変人である・・。安易な解釈は出来ないと思われます。(この監督は経歴がとても複雑だ)

その他この映画の見所は、人狼の工作員として暗躍する婚約者役のカタリナ・ハルトマンが信念を告白するシーンであろう。ここに後年見られる
ナチ・シンパスィーなトリアーの片鱗を伺える気がするのだが・・?今こそもう一度見直したい怪作である。


「人狼」 敗者は吊るされさらされる・・理想のために戦っただけなのに・・とナチに共感するカタリナ

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