博士の異常な愛情/ または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか

キューブリックの代表作

ブラック度 100
ネタが危険度 100
ストレンジラヴ度 100
総合得点 90


キューブリックの放つ異彩のブラックコメディ。

気のふれたアメリカ空軍基地司令官の命令によって、50メガトン級の核を積んだ爆撃機がソ連領内に進入し、ソ連の核施設に一斉攻撃を加えようとする。

核戦争勃発を恐れて米大統領と同基地内のイギリス空軍大佐はこれをとめようと奔走するが・・

いかにもキューブリックらしいといいましょうか、非常に危険なネタに満ちた映画です。

でもこれは馬鹿映画です。どこが馬鹿かといいますと、ソ連には「皆殺し爆弾」というすんごい核兵器があって、核攻撃を受けると自動的に爆発して地球上の生物を一瞬で皆殺しにしてしまうという、その核放射能の半減期は90年以上あるというが、この兵器がまず馬鹿。自分まで滅ぼしてどうするんだよ!!だいたいこんな兵器、抑止力以外に使えないじゃないか、どうしてあるのを黙ってた?と米大統領がソ連大使に詰め寄ったら、「来週の党大会で発表させるつもりでした・・ホラ、総書記は人をビックリさせるのが好きだから・・」だって(ToT)。

このソ連大使もソ連の指導者もすごい馬鹿です。核攻撃を指示した空軍司令官も、長いこと共産主義の情報戦に晒され、米国民は「体液」が汚れている。これ以上「体液」が汚染されるのを黙っているわけには行かない、と意味不明な理由を・・イギリス軍大佐は、何とかこの狂った司令官から攻撃中止の暗号を聞きだそうとするのだが・・この司令官は、大統領の命令で逮捕に来た陸軍部隊の目前で髭剃りながら自殺してしまう。拷問に耐えられるか心配・・と言い残して・・。こいつもすんごい馬鹿ですね。髭剃りながら死ぬなよ!!おかげで空軍大佐が司令官を殺したと陸軍部隊に勘違いされちゃう。こうしてる間にもB52は着実にソ連領内に近づいていると言うのに・・。

とまあこの映画に出てくる奴はそろいもそろってメガトン級の馬鹿ぞろいなわけです。他にもいっぱい馬鹿がいて、馬鹿はもう当分いらないという気分になってくる。

で、タイトルの博士って誰よ?と思い始めた頃に、この映画、いえ、映画史上最大の馬鹿が登場します。Dr.ストレンジラヴです。



もう見た目からしてすごい馬鹿そう・・もう馬鹿はいいよ!って思ってるのに、この人が中々退屈させてくれない。ソ連大使が、アメリカも皆殺し兵器を作ったとニューヨークタイムズに載ってましたと言ったら大統領が私はそんなこと知らんぞ、博士そんなもんを作ったのか?と聞くと嬉々として、「私の権限で作らせました」と答える。そして、皆殺し爆弾が爆発した後の世界のことを、嬉しそうに語るのだ。

この博士はナチ崩壊後に帰化したドイツ系で、興奮すると意思とは無関係に右手がナチ式敬礼をやってしまうという馬鹿で、さらに「こういうわけなんですよ、総統閣下、いや失礼大統領でした。」とまーこのようにすごく馬鹿なんですよ。

博士がいうには今すぐ炭鉱所を地下都市に造り替えて、男一人、女十人の割合で選ばれた人物をそこに避難させるべきだ、アメリカの指導者層は優先的に選ばれる権利がある、女性はセックスアピールのある人ばかり選ぶべきだ、とわけのわからん優生思想を嬉々として語り始める。それを聞いて、他のアメリカの重役たちは嬉しそうにしている。こんな馬鹿どもが世界中を滅ぼせるを核を管理しているのかと、観客は呆然としてしまう。

この映画が製作されたのは1964年、ベトナム戦争真っ只中、キューバ危機、ブレジネフのクーデターなどあまりにもやばい時期なのです。

いくらなんでもシャレにならない時期なんですよ。こんな時期にこんな映画を作るなんて、キューブリックは鬼才と言うかアホと言うか迷ってしまいますが・・。私としてはアホだと思っています。
結局、核も戦争も人間が管理している、人間は基本的に自分勝手で感情に左右される生き物である。その恐怖を改めて核時代に生きる我々に知らしめる、狂気の傑作であるといえる。




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