>>戦争映画中央評議会

戦争のはらわた

最も有名なドイツ兵

 

むさい度

100

戦争映画の模範度

100

アナーキー度

100

総合得点

95



 

77年のイギリス・西ドイツ映画。

説明不要の名作だ。戦争映画が求めるほとんど全てはここにあると言っても過言ではないだろう。舞台は中後期の独ソ戦だが、これはジェームズ・コバーンが演じるスタイナー軍曹という「神話的な男」の生き様をその背中からビシッと学ぶ、そんな映画である。

スタイナーのかっこよさはもはや現実離れしすぎており、最近流行りの
”戦争に英雄はない!キリッ”の美学には完全に反していると思う。しかしそれでもこの映画は完璧な名作であり、戦争を憎み忌み嫌い、完全に戦争そのものに喧嘩をふっかけているかのような反戦映画のはずなのに、異常に戦争に行って人をぶっ殺したくなる、そんな危険な魅力に満ちた一本である。かなりアブナイ戦争映画だ。

 


戦線がロシア有利に傾き始めた43年のタマン半島を舞台に、末端でシコシコとロ×ケをぶっ殺して飯を食う小隊がいた。隊長は
スタイナー。腕っこきでとにかく頼りになる男・・部下たちも栄光の勝利も無残な敗北も知り尽くした海千山千の薄汚れた百戦錬磨の兵士たちだ。スタイナーはそんな彼らから異常に尊敬を集める小隊長。そこにプロシア貴族で実戦を知らない、そのくせ勲章目当てのシュトランスキー大尉(ハウプトマン)が着任し、正反対の二人は確執を強めていく。

シュトランスキー大尉のすすめで伍長からフェルトベーベル(軍曹、劇中はサージェントと。言葉英語だからね)に昇進したスタイナーだったが、むすっとした顔で興味なさげだ。
「あれ?嬉しくないの?」と聞くシュトランスキーに「ちっとも」と答えるシュタイナー。この一シーンが示すように、スタイナーは徹底した反権力主義で、大佐に向かって「将校は好かん」と言い放つアナーキストである。新兵が志願でやってきたら一も二もなく「今後は志願するな」と言ってのける困った小隊長。鉄十字章を鉄くずと断言するほど名誉や権力に関心がない。この映画のほとんどは反権力、反ブルジョワで構成されているように思う。

軍服も将校も嫌い!そんなスタイナーがなぜ優秀な兵士足りえるのか?それは仲間の存在である。小隊の部下だ。部下というよりバディー(相棒)だ。部下の命のため、自分の命のため、彼は今日も赤軍相手に死闘を繰り広げる。T-34相手に地雷を抱いて肉薄攻撃も辞さない。戦争の犬である。何度負傷しようが、バディーどもが戦う最前線に何度でも舞い戻る。野戦病院で看護婦といい仲になっても一切省みることはない。そんな彼の背中に看護婦はこう言うしかない。溜め息と共に・・。「戦争が好きなのね・・」それを聞いてばつが悪く思いつつも気のキいた言葉一つ吐き出せない。「それが貴方のビョーキね・・」とも。スタイナーは振り返ることもなく仲間の待つ最前線へと帰っていく。最前線こそがこの男の家なのだ。こういったアチチュードはその後の戦争映画に何度も見られるプロットである。(実は「西部戦線異状なし」の頃から見られるアチチュードなのだが)戦争を誰よりも忌み嫌うのに戦場しか居場所がない男たちの悲哀・・。泣かずにはいられない。

軍事描写に関しては機関銃MG42や自動小銃MP40あたりが連射しすぎだろ?空冷式だろと言いたくもなるが、PPSH1941を愛用し、戦場を駆け回る命知らずのスタイナーをみているともはや言葉は何もない。

またこの映画はT-34という鬼戦車の怪物ぶりを死ぬほど味わえる映画で、まさしくモンスターそのもの。どんなところでも問答無用に突き進み、キャタピラキュルキュル言わせながら76ミリ砲をぶっ放し大画面で迫ってくるこのお化け戦車を観ていると、やっぱり東部戦線には行きたくないなと思うしかない。

戦って戦って戦い続け、わけのわからん名誉欲に取り付かれたオッサンに仲間を惨殺されるスタイナーは、はじめて戦場をほっぽり出してシュトランスキーと白黒つけにいく。そこで見るマガジンの再装填すらできない、プロシア貴族様の小物ぶりに勝ち誇った大笑い。スタイナーの大笑いでエンドクレジット。いつまでも笑い続けるスタイナーに、むやみに名曲のエンディングテーマ。終わり方すら何が何やらわけわからんが、とりあえず圧倒されることうけあいだ。そして最後にベルトルト・ブレヒトの
「諸君、あの男の敗北を喜ぶな。世界は立ち上がり奴を阻止した。だが奴を生んだメス犬がまた発情している」という伝説の名文句がビシッとシめる。いや〜脳が震えた。

といった調子ですが、皆さんがこれを気にいるかどうかなんて知りません。おれはこの映画が死ぬほど好きなので褒めちぎってしまうのは仕方がないではないですか。ドイツ軍ファンだからどうこうという映画ではないと思うんだよね。
戦友のために戦う!っていうイズムはもはや普遍的なものだと思うし、言葉は英語だからドイツ軍の描写がうまいとは思わない。でもこのきったない男たちこそが末端の軍隊の姿なのかな、などと気持ちよく錯覚できるいい映画です、はい。


スタイナー軍曹


この少年は「僕の村は戦場だった」へのオマージュという話だ



女性兵士も山盛りいた赤軍内部の描写も要注目!このシーンは童貞の新兵がきれいなロシア娘に色じかけでひどい目にあっちゃうシーンだが、まさに観客とこの新兵の心情がシンクロする名シーンだ。美女のおっぱいにデレデレしてたらぶっ殺されちゃうという・・女は怖いぜ!


小隊がおれの家族だ!実際悲惨な戦場を経験し、負傷して国に帰れた兵隊もかなりの確率で前線に舞い戻ってしまうという。理由は人それぞれ自分らしい生き方というのがあるのでしょうが、「ハートロッカー」で爆弾処理中毒の兵士がいたけど、アレは特別目新しい視点じゃないんだぜ。実は。命のやり取りは最大の娯楽なんだ!


最後は馬鹿笑い!さあ一緒に笑いましょう!

 

 

 

 

 

 

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