>>戦争映画中央評議会

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捕虜大隊 シュトラフバット

国民の半分は刑務所へ行き残りは敵と戦い殺される

 

絶望度

100

反ソ

100

極貧

100

総合得点

80



2004年ロシアのTVシリーズ。

冤罪で懲罰大隊に送られ、なんとか生き延び名誉回復を遂げた稀有な人物、ウラージミル・カルポフの自伝的ドラマだ。カルポフは例外中の例外で親衛大佐にまで昇進している。

だが物語は過酷だ。

「捕虜大隊 シュトラフバット」という邦題はどう考えてもおかしい。"懲罰大隊"と訳すべきところである。

これはロシアではかなり視聴率が良かったそうだが、金はまったくかかっておらず、昭和50年代のようなショボい戦闘シーンが涙を誘う。だが、それでもこれはかなりの良作だとオススメしたい。

ドイツ軍の捕虜になってしまったばかりに祖国から裏切り者の売国奴として懲罰大隊に送られた元赤軍少佐ワシリー・ステファノビッチが主人公。優秀な人物であったステファノビッチは能力をかわれ懲罰大隊の大隊長となるが、階級は剥奪され、一等兵の扱いになるらしい。

舞台はやはり明示されないが、スターリングラード戦が終わったあとあたりらしい。43年の春〜秋あたりか?場所もいまいちわからない。懲罰大隊がどの師団かもわからない。よくみればわかる人もいるかもしれないが、ワタクシ程度の知識ではよくわからなかった。ハナから架空である可能性も。

わからなくてもドラマを楽しむのに特に問題はないと思う。

懲罰大隊は玉石混交の奇妙な集団で、祖国ソビエト連邦に政治犯にしたてられた高潔な人もいれば、ケチな強盗、殺人犯、命令違反、臆病の罪、、に問われた人々が劣悪な環境で最前線に立たされ、赤軍本体が攻撃をするつゆばらいとして、ある時は盾にされ、ある時は見殺しにされ、ある時はNKVD※から機関銃で撃ち殺される。42年〜45年まで懲罰中隊は1049を数えたという。

※秘密警察

こいつらクズだし自業自得だよな、と思うこともあれば、いくらなんでもこれはあんまりだよなと涙が出てくることもある。正義も悪も混沌としており、観る側にも脳みその柔軟性が求められる。日本の場合、こういうのをやらせると幼稚な善悪二元論に陥りがちだが、やはり巨大な多民族国家ロシア。こういうのをやらせると我々よりはるかに優れているといえる。



ストーリーもご都合主義が少なく、リアリズムに満ちている。もうどんどんくだらない理由で使い捨てにされて死んでいく兵士たちの姿は涙なしにはみれない。

戦闘シーンは金かかってないので情けないほどショボくれているが、後半に行くにつれ予算を温存していたのか爆発シーンや銃撃シーンなど迫力を増してくる。対戦車戦も豊富で、色とりどりの兵器や銃器を見ているだけでもなかなか楽しい。特別派手な演出はないが、ドライで殺伐とした戦闘シーンは独特の味があり、楽しくもなんともなさそうなリアルな戦場の描写である。

懲罰大隊兵士たちの人間模様も見所だ。強盗犯や聖職者、元白軍将校に元メンシェビキ党員、トロツキー派、将校の妻を寝とった下級兵士に、詐欺師に殺人犯、命令違反や臆病の罪に問われたもの、NKVDに嫌われて罪を着せられただけの人もいる。これらがヤケクソな任務に投入され、NKVDに監視され、師団の捨て鉢として利用され、泣き言いいながら奮闘するんだ。面白くないわけないだろう。ロシア近代史に現れ、スターリンの鉄の拳に粉砕された様々な階層の人々。この人間模様をみてるだけでご飯三杯はイける感じ。梅宮辰夫ライクな強盗犯グリモフ中隊長など、準主役級の人物もキラリと光っている。


ワシリー・ステファノビッチは高潔な人柄で、懲罰大隊に堕ちても祖国を信じ部下に配慮するプロの軍人。しかし反抗的な態度でNKVDの少佐とそりがあわず、様々な嫌がらせや妨害を受ける。しかし何度も何度も部隊が崩壊するまで戦い続け、逃げることもなく奮戦を続け、文句垂れながらも師団命令にはしっかり従う。反抗的ではあるが、優秀な男と師団長にも認められている。そんな男が何人も何人も部下を死なせ、その葛藤に苦しみぬく。


このドラマは、超がつくほどの反ソビエト映画だ。これほどソ連体制の残虐さ、理不尽さ、無茶苦茶さをつまびらかにし、告発した映画もないだろう。被害者は自分たちなのだから憎しみも根深い。ドイツを批判する話はほとんど挿入されず、赤軍の野蛮さやNKVDの冷酷さをネチネチと描く話ばかり。明るい気持ちには決してなれないが、かなり良質な東部戦線のお話。全11話の膨大な長尺のドラマである。「イワンの戦争」などをお供にゆっくりみすすめてほしい。ドイツ版の東部戦線ドラマ、「ジェネレーション・ウォー」も関連作品としてオススメしたい。この二つは独ソが放つ「東部戦線、闇のバンドオブブラザース」と呼びたい。オススメだ。

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