ホテルルワンダ

感動してはい、終わりでええの?

疑問度 100
リアル度 70
??度 100
総合得点 70

これはね〜。各地で大絶賛されてるんですよ。それをね、またひねくれもののこんなおれが批判するのもなんか嫌なんだけど、思ったことをとりあえず書かせていただきます。

この映画確かにテンポが良くて見やすいんですよ。でもそれだけかなって感じ。
ストーリーはルワンダで高級ホテルを経営する支配人の主人公が、ルワンダで始まった内戦で、フツ族民兵が手当たり次第にツチ族を虐殺してまわるのをみて、全力で奔走し、ツチ族の人々を助けるという美談がベースになっております。
主人公のポールは何もできない男ではありますが、ホテルの支配人という立場でできることを最大限にやろうとするわけです。ホテルにあるビールを民兵に振舞ったり、袖の下つかませたりして見逃してもらったり、海外のコネ使って国連を動かしたり、精一杯やって1人でも多く助けるのです。いい話ですね。でもいい映画とはいえません。

ルワンダの内戦は、フツ族がどうしてここまでツチ族を憎むのか、どうして西欧諸国はルワンダの大量虐殺に対して関心を払わなかったのか、二つの謎があるわけです。前者は大航海時代にルワンダを植民地にしたベルギー、ドイツがツチ族はフツ族より優秀なので、ツチ族がフツ族を支配するように人工的に社会階級を造り替えてしまったことに端を発しています。元来穏やかに共生していた民族が、植民地支配によって人工的に憎みあうように仕向けられたわけです。こうしてフツ族はベルギー、ドイツではなく、その手先でしかないツチ族を憎んだ・・こうして植民地経営をやりやすくしたと言う背景があります。
そして西欧諸国がルワンダに関心を払わなかったのも、同時期にユーゴスラヴィアで内戦が起こっていたので、西欧諸国は同じ白人同士の内戦を「より悲劇」と捕らえて、そっちばかり注目してたわけですね。
二重の人種差別が背景にあるのです。
これらの二つのどうしようもない悲観的というにはあまりにも現実的な問題が横たわっているのです。こうして悲劇は増幅され、たった数ヶ月で100万人が民族浄化を受けることになったのです。

この映画はポールとその家族が、幾たびもの危機を乗り越えて、最後には別の国に逃れることができた、はい、ハッピーエンドヨカッタネという終わり方をするわけです。ラストにテロップで、100万人殺されたという解説が入るわけですが、何故ここまで虐殺が過熱し、人間が人間に敬意を払わず、ナチスを連想させるような悲劇が繰り返されたのか、全く突っ込もうともしないのです。

映画館はぎしぎしにすし詰め状態で、おれはエンドロールが始まった途端帰ろうとしました。しかしあまりに周りの客が帰らないので、すいませんすいませんとか言って押しのけるのもアレなので、周りが立ち上がるまで待ってました。結局皆垂れ幕が下がるまで立ち上がろうともしません。あたりは啜り泣きが聞えます。どうやら感動しているらしいのです。あまりにも大きな悲劇なので悲しい涙なのかと思っていたが、館内の電灯がついて周りが明るくなった後おれは愕然としました。皆、すごく嬉しそうな顔をしているのです。いい映画だったな〜
ハッピーエンドで良かったなぁと。あるカップルなどは泣きながら笑い声さえ上げるのでした・・。

一体何なんでしょうかこの空気は。確かにこの主人公とその周囲にいた何百人かは助かったらしい。しかし現実には100万人が無残にナタで首を切り落とされたり、機関銃で射殺されたり、非情な虐殺から逃れることはできなかったはずなのに・・。どうしてこれがハッピーエンドになるんでしょうか?いや、ハッピーエンドではないはずです。これはハッピーエンドじゃないんですよ。

まだ虐殺にいたった根本的な原因は全く言っていいほど解決されていないのです。
共産ロシア、ナチス、ボスニア、コソヴォ、チベット、ソマリア・・これほどまでに虐殺は繰り返されているのに、人間の異民族、異宗教、異イデオロギーを虐殺してしまうという本性(本能)に対する解決策、そんなものがないにしても何かしらの主張、これがないのはあまりにも楽観的過ぎるのではないでしょうか?まさかそれが家族を想う愛が地球を救う!とか陳腐なキレイゴトでまとめるなんて言うんじゃないでしょうね?

虐殺シーンは直接的な描写もなく、アメリカ人にしか見えないルワンダ人たちと臨場感も問題なしとはとても言えません。虐殺をテーマにした映画では「炎628」の足元にも及んでいないでしょう。

おれはこれはジェイソンから逃げ回る家族が、何度もジェイソンが襲ってきて危なかったけど、親父の愛と勇気が家族を救った!とかいうような軽いパニック映画にみえてしょうがなかったのですが。

虐殺の起こった根本的な原因に関する考察なくして、全て終わった後にこれ観て涙流してそれが一体なんになるのだろう?
感動するのがよろしかろう。感動すればよい。問題は何も解決していない。そんな覚悟なき涙何リットル流したところで人一人救うこともできはしないのだ。

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