ライトテイクスアス 〜ブラックメタル暗黒史〜


「ライトテイクスアス 〜ブラックメタル暗黒史〜」というドキュメンタリー映画がある。日本非公開でありDVDも発売されていないマイナー映画だが、ひっそりとこういう場所で観ることができる。

これはブラックメタルシーンのカリスマ、
ダークスローンのフェンリッツと、バーズムのヴァーグ・ヴァイカーネスのインタビューをふんだんに盛り込み、彼らの言動から謎に満ちたブラックメタルというムーブメントの解明を試みようとする野心的ドキュメンタリーだ。




その他
サテリコンのフロストなどが登場する。

まだこの頃ヴァイカーネスは刑務所に収監されているので、彼の発言は全て刑務所の中で収録したものである。

インナーサークル内の内ゲバの真相だとか、当時どういうこと考えて犯行に及んだのかとか本人が丁寧に話してくれている。と言っても目新しいものはないが。

一方フェンリッツはヴァイカーネスとは違い逮捕なんかされてないから、その後もブラックメタルバンドとしての活動を続けていたが、インタビューアーに昔ほど過激じゃなくなったことを心配されたり、エレクトロミュージックにはまってて
ブラックメタルに飽きてないか?というような言動も聞かれ、かなり赤裸々である。

かつてアーセスも趣味でエレクトロを聴いていたそうだが、多様化するブラックメタルシーンにおいて、作風に電子音楽を取り込むのは珍しい試みではないにせよ、なにしろプリミティブブラックメタルの代表バンドであることを考えればおいそれと不純物を混ぜるわけにはいかないであろう。

彼は現代アートの展示会を本人主催で行ったり、
メタル以外の活動もかなり意欲的である。
もともと新しいもの好きの影響されやすいアーティストなのかもしれない、なんて想像もできて楽しい。

本人が動いて喋っているだけでもファンは泣くしかない。それだけでも大満足である。タバコ吸いすぎですよ。福祉国家のノルウェーでこんなにタバコ吸う人いるんだね(笑)。

あと
フェンリッツがバーでカップルがイチャイチャしてる横で独りで難しい顔してタバコ吸いながら飲んでるところとか、ストイックだな〜と感じた次第(笑)。

他には獄中のヴァイカーネスがいかに犯行に及んだかかなりショートカットして語られている。
また、アーセスとの確執もヴァイカーネス側の発言のみを取り上げており、文字通り一方的な描写だ。かなりヴァイカーネスびいきな映画である。

彼は彼の作品からは想像できないほど雄弁によくしゃべる。そして中には誇張や嘘も多分に含まれているだろうと容易に推測できる。彼は周囲をかき乱し、嘘をつき、甘言を弄し、人を操って自分の立場を有利に持って行こうとする、テッド・バンディのような知能型犯罪者なのだろう。皮肉にもよくしゃべる彼の映像を見て僕はそう感じたのであった。

だが娑婆で不自由なくキャリアを積んできたフェンリッツが、「
やつの作品には影響を受けたよ」「ブラックメタルの申し子だった」と褒め称え、「ヴァーグは常に偉大な男だ。彼が全国民を敵にまわしたとしても」と真顔で断言する姿は戦慄を覚える。


フェンリッツにここまで言わしめる
ヴァイカーネスの悪魔の化身のようなカリスマの片鱗を味わうことのできる良ドキュメンタリーだ。

それにブラックメタルなんてアングラな世界を特集するドキュメンタリーなんて今後二度と作られないかもしれない。映像として貴重な作品なので、観れるうちにみておいた方がいいと思う。

個人的にラスト、エンドロールに
ENSLAVEの「Entrance-Escape」がかかった後、フェンリッツが画面に映り、「サタン!!」とデスボイスで叫ぶ所が大好きだ。叫んだ後、一瞬見せるカメラ目線。「はいはいサービスサービス」と言っているかのよう。ヴァイカーネスが全身全霊ブラックメタルに人生を捧げたのに対し、フェンリッツはエンターティメントとしてのブラックメタルの理想を我々に見せ続けてくれた偉大な男である。



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