日本のいちばん長い日

色あせぬ名作

 

真剣度

100

鬼気迫る度

100

演技力

100

総合得点

99



67年日本映画。「独立愚連隊」などの岡本喜八監督作品。

日本の終戦、8月14日正午〜玉音盤が放送される8月15日正午までの24時間を追った日本の戦争映画の総決算である。

これは古いからと言って避けるのはあまりにも愚かである。これ以上の邦画はおれは今のところ知らない。これほどの映画は今の堕落した邦画界では絶対に生まれないだろうなあ、なぜこれほどの映画が作れた国が、ここまで駄目になってしまったのか全く理解に苦しむのである。

愚痴はこのぐらいにしてそろそろ本題に入ろう。



ストーリーは7月末に連合軍側から提示されたポツダム宣言に対する日本政府がいかにして対応したのかをナレーションを含めて簡単な説明が入る。そしてもはや戦争継続は不可能である・・と天皇の御聖断が下る。しかしあくまで本土決戦を主張する陸軍は、近衛師団の参謀、古賀少佐と陸軍省の軍務課将校、畑中少佐、推崎中佐を中心にクーデター計画が水面下で進められる。その計画とは、近衛師団長、森中将を説得して近衛師団を決起させ、宮内省を占拠し玉音盤を手中にし天皇を戴き、そうすれば東部軍をはじめとした、全陸軍、国民までもが戦争継続のために決起するであろう、という計画であった。いわゆる宮城事件である。

左から推崎中佐(中村忠雄) 古賀少佐(佐藤允) 畑中少佐(黒沢年男)


玉音盤を録音している最中も、房総半島に接近中の米機動部隊の迎撃に特攻機が今日も飛び立っていく・・。全ては日本国民を護るため・・

まず近衛師団ってなに?東部軍ってなに?って話になってくるとわかりにくいので簡単に説明すると、近衛師団というのは、天皇陛下を直接御守りするために東京に司令部を置く精鋭部隊である。東部軍というのは、本土決戦に備えて温存されていた皇軍正規の精鋭部隊である。特に首都圏の防衛を任務としていた。この映画は、この東部軍と近衛師団を決起させて天皇を戴き、政府が閣議決定した終戦の企てを阻止しようと奔走する、狂信的な陸軍将校の反乱劇なのである。もちろん実話である。

この映画はストーリーも鬼気迫るものがあり、2時間半を一気にみせるテンポのよさ、過剰すぎずあっさりすぎず適切な演出、情に訴えかけるような無駄な演出もない。そして役者たちのあまりにも高すぎる演技力、そして右左などと稚拙な議論など鼻から相手にしない真摯な魂のこもった熱さを感じさせる映画である。

健軍以来敗北を知らず、巨大な軍事力で極東に君臨した巨大帝国がいかにして敗北を受け入れるにいたったか丁寧に描いている。史実に忠実に描いており、無駄なカットが全くない。完璧すぎる映画である。

負けを受け入れられない狂信的な軍人たちがたくさん登場する。軍人だけでなく、警察、民間の学生にいたるまで、戦争継続を主張していた人たちがたくさんいたのだということがよくわかる。立憲君主であった(国政に口を挟めない立場の)天皇陛下が、自ら決定しなければならなかったほどに、この時の日本は混乱していたのであった。

確かに2発の原爆を落とされ、食料もなく、最悪の状況だったに違いないが、それでもなお外地に270万の第一線部隊、本土に温存された230万の陸兵、特攻機10000、これほどの軍事力を持ちながら降伏を受け入れるのは敗北を知らず、虜囚の辱めを受けずと徹底的に教育された軍人をはじめ、末端の国民にとって大変難しいことだったのだろう。ましてやすでに戦死した300万の同朋にどう申し訳が立つと言うのか。

結局近衛師団長は決起に賛同してくれず、師団長を殺害して偽命令を出すことに。こうして宮内省を占拠したが、東部軍は結局決起せず、逆に反乱軍を取り押さえると言い出す始末。こうして彼らの反乱計画は頓挫した。頓挫した後諦めきれずビラを撒きまくって決起を国民に訴えた後、宮城横で自決する・・。

連合軍が、進駐してくれば軍はもちろん、天皇や日本国民もどういう扱いを受けるかわからない。この日本という国が地球上から消えてなくなるかもしれない。どうなるかわからない。我々は今安穏と生活しているので、この頃の日本人を愚かと笑うのは簡単である。しかし日本が消えてなくなるかもしれないという恐怖をこの頃の日本人は持っていたのである。そうなれば本土決戦してでも戦局の好転を待ったほうがよい結果になったかもしれない。誰にもそんなことはわからないのである。無論我々にも。少なくとも、彼らがここまで必死に守ろうとした日本・・今それは果たして存在しているのだろうか?彼らは今のような日本を護りたかったのだろうか?金が全てで人は使い捨ての超資本主義。これが当時存在していた大日本帝国と同じものだろうか?もうとっくに滅びてしまっているのではないか?ならば本土決戦したほうがよかったんじゃないか?おれは真剣にこう思うのだ。それとも日本が例え戦争に勝ったとしても、ここまで日本は腐りきったのだろうか?おれにはわからん。

それはそうと、この映画の役者たちの鬼気迫る演技、アップに耐える精悍な顔、元軍人も多く、メリハリのある美しく歯切れのよい日本語を聞かせてもらえる。

とりあえずイカれたヤケクソ精神200パーセントの軍人たちがたくさん登場するのが嬉しい。これを観てしまうとローレライだのYAMATOだので感動したなどとは簡単に言えるはずないのである!

特筆すべきは

@軍令部の大西次長。このシトが終戦が決まった時に外務省局長に
あと、2000万!後2000万特攻に出せば必ず勝てます!あと、2000万!日本男子半分を特攻に出す覚悟で戦えば!必ず!必ず!」と嘆願する姿・・もう狂気と言う以外にない(笑)。↑で理解できるとかちょっと書いてるけど、やっぱりこれはイカレてるわ(笑)。ヤケクソという以外に言葉が浮かびましぇん。

「後2000万!後2000万!」って簡単に言うなよ(笑)。

A横浜警備隊の大隊長、佐々木大尉。このシトすごい迫力です。。
皇軍の辞書に敗北の2字なぁぁく!最後の一兵まで戦うのみであーーーーーーる!
第1の攻撃目標は!終戦を画しお〜る!鈴木内閣総理大臣んん!!

「てぇぇぇぇ!!」首相官邸を襲撃する佐々木大尉率いる国民神風隊 すごい迫力です!これぞ日本軍人!

B徹底抗戦を訴える青年将校たちに陸相、阿南大将の「
この阿南の屍を越えてゆけ!」という台詞 かっこよすぎ。

三船敏郎・・!

C決起が失敗したにもかかわらず諦めきれずに決起を促すビラを撒く畑中と推崎。
国体護持のため本8月15日早暁、決起せる我ら将兵は全軍将兵ならびに国民各位に告ぐ!(中略)・・我らただただ純忠の大義に生きんのみ!


宮城の横で自決・・このシーンは逮捕されること覚悟で撮ったんだって この黒沢年男演じる畑中少佐はよかったね

というわけでこれは必見です・・。観るっきゃない!最期の君が代は泣けますよ。この日斃れた大日本帝国の鎮魂歌なのである。

 

 

 

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