日本のいちばん長い日

名作に勝てていない

 

重厚度

90

鬼気迫る度

30

演技力

90

総合得点

70



2015年、戦後70年の節目の年に満を持して放たれた戦争映画大作?である。過去の同名映画、岡本喜八監督の67年映画のレビューはこちら。

日本のいちばん長い日



さて、この映画はつまるところ、喜八版と比較されるのはもはや宿命であって、仕方がないところだと思うのだが、結論から申し上げますと、今回の新作は50年ぐらい前の喜八版に大敗を喫している。ただ、悪いところばかりではなく、良いところも多かったのでいろいろご紹介していきたい。

この映画は冗長で間延びした印象を与える。2時間38分もあるし、正直かなり長い。それでいて、タイトルは8月14日から15日にかけての一日が、長かったね、色々あったよね、という意味なのだが、この映画はなんと1945年の4月ごろから映画がはじまり、まったく「一日」の話じゃねい。

鈴木内閣の組閣、ルーズベルトの病死、ヒトラーの自殺、東京大空襲、ポツダム宣言、二発の原爆、とダイジェスト仕様で話が進むうえ、陸軍省の軍人たちや、役所広司演じる阿南大将の周囲の人間模様、天皇や侍従たち、鈴木総理が家族と飯食うシーンなどぽんぽんぽんぽんと場面が飛び移り、早送りしているかのような錯覚を覚えるほど。

率直に詰め込みすぎだな、と感じた。喜八版は原爆が落とされ、天皇が「もうポツダム宣言受け入れようぜ、、、もう負けやん。。。諦めようや、、、」と言うところから始まり、タイトルもそこで初めてカットインする。そこから政治家が戦争を終わらせるために喧々囂々の内輪もめに次ぐ内輪もめで、あまりにぐだってるもんだから、陸軍の過激派が隙をついてクーデターを起こし、その一番長い日を迎える流れだ。この展開は今観てもスリリングで、頭のおかしいヤケクソ軍人のキチガイ入った面魂が画面いっぱいに大写しになるマッドネス度100の傑作であった。

しかし今回の新作は、別の意味で大変ぐだりまくっており、その一番長い日を迎えるまでが無茶苦茶長い。確か映画が始まってから1時間半ぐらいかかっていたと思う。となると、陸軍将校の反乱劇も、横浜警備隊の佐々木大尉も、活躍するにはあまりに短すぎる上、この期に及んで阿南の切腹を未練タラタラにだらだら引き延ばすもんだから、正直見せ方がとっても下手くそだな、と感じた。まあ、喜八版と同じ風にするのもそりゃあおもしろくないだろうが、結局のところ、この映画の見せ場はキチガイ陸軍省のイカレ軍人たちの反乱と頓挫であり、ここをさささっと早送りで終わらせてしまったのには誠に遺憾。じっくり見せるべきだった。それに、おれの中でキングオブキチガイ軍人たる横浜警備隊の佐々木大尉と国民神風隊がおまけのような扱いで、ほんの1分ぐらいしか画面に出てこないのには閉口。心の奥底から残念であった。中途半端すぎるだろ。もうこんなんならあえて出てこなくていいんじゃないか?別にストーリーと絡んでなかったし。

以上のように、とにかくエピソードを詰め込みすぎてぐだった印象である。堤真一なんて中盤以降完璧空気であった。この人の役職が何であったか最後まで記憶できた人はそう多くないだろう。端的にまとめると不要なシーンが多すぎ、省いてはいけないところを省いてしまった。そんな映画だ。ストーリーの顛末やテーマは喜八版とほとんど同じはずなのに、随分印象の違う映画になってしまった。

良いところは重厚感である。セットや映像は及第点。また俳優の演技も安定感があり、メインキャストはもちろん、エキストラに至るまで軍人風の演技が染みついていた。ここは昨今のダメ日本戦争映画と比較すれば抜群に抜きんでていた。演技指導をした人を是非使いまわして、今後も良質戦争映画を作ってもらいたい。唯一アレだったのは、佐々木大尉のマツケンである。軍人ではなく、平成から来たキチガイ連続放火犯みたいになっていた。でも、これはこれで笑えたので良かった。上記のようにここはシーンが短すぎたことが惜しまれる。

神がかっているのは天皇を演じる本木だ。話し方や風貌もよく似せてあり、がんばって練習したんだなあ、と一発でわかるプロの仕事だ。ただ、ソクーロフの「太陽」のアレもすごいので、是非見比べてほしい。天皇がのりうつったかのような奇怪な演技で、これも必見である。

陸軍省の面々は基本的にキチガイ度で喜八版に大敗を喫している。「後2千万!」の軍令部の大西次長も登場するが、やはりキチガイ度ヤケクソ度で大敗を喫している。唯一良かったのは畑中少佐役の青年。彼だけはヤケクソ度高めでなかなか良い演技だった。特に終戦が大御心と聞き、おでこに青筋立てて悔しがるシーンは必見だ。すごい血管だなあと見とれてしまった。
他はどこか理知的で自分たちのクーデターにためらいがある感じで、意志の強さみたいなものが感じられない。喜八版はここがすごいので是非見比べてほしい。


 

 

 

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