ヒトラーの贋札
良い映画ですよ

虐待度

100

八方塞がり度

100

SS極悪度

80

総合得点

80




これはアカデミー賞の外国語映画賞をとった名作ドイツ映画だ。だいぶ前に観たのだが当時おれのホームページは絶賛休眠中であった。よってレビューを上げるために最近もう一度観直したことを付け加えておきたい。



話は単純。もともと偽札つくりのスペシャリストとして名を売っていたあるユダヤ人が警察に捕まる。マウトハウゼン収容所(マウトハウゼンにはガス室があった)に送られるが職業?がら絵が大変上手だったこの男はSSに気に入られて看板描いたりして自分の身を守っていた。

そんな中、移送の命令が下り、ザクセンハウゼン強制労働収容所に送られる男であった。なぜ?よくわからないまま連れてこられるままになっていたら、他にもたくさん似たような囚人が整列させられている。そこに登場するSS高級将校。よく見ると昔自分を逮捕した男じゃないの。当時は刑事さんだったが、今では襟にピカピカの髑髏の徽章をつけた立派な親衛隊シュトゥルムバンフューラー(SS少佐)。ヘルツォーク少佐と呼ばれるこの男はある奇妙な秘密作戦の全貌を明らかにした。その名も「ベルンハルト作戦」。世界史上最大規模で行われた贋札偽造計画である。

ベルンハルト作戦は英国ポンドを標的に偽造乱造しまくり英国ポンドの価値を落として戦争経済に大打撃を与えること、英国内でスパイ活動中の工作員の資金活用などを目的に行われた秘密作戦である。だが実際作っていたのは腕っこきのユダヤ人たち。根拠地はベルリン郊外北に位置するザクセンハウゼン強制収容所であった。ベルンハルト作戦は実在した。これは実話をベースにしているのである。

ベルンハルト作戦によって、英国経済は大打撃を受け戦後もポンドの価値が回復するのには相当な時間がかかったそうである。(それでも英国は勝利したが)

ポンドの偽造に成功した秘密チームは今度はドル札偽造に着手するが、これは失敗。技術的な問題とされるが、この映画では正義漢のユダヤ人技術者の頑強なサボタージュによるものと描かれている。

ユダヤ人はナチの奴隷と化していた。これが実情である。従わねば殺されるのだから責めることはできない。しかしアレコレという輩もいる。この映画ではユダヤ人たちに花を持たせた脚本ということで理解して良いだろう。ユダヤ人の中にも抵抗者はいた。ナチの暴政に抵抗し、ある種の勝利を収めた人々もいた。これは荒唐無稽な嘘話しと切り捨てることは誰にもできないだろう。

映画は上記のように虚実入り混じっている。というより事実を元に創作したという方が正しいか。劇中ヘルツォーク少佐と呼ばれているが、彼がベルンハルト・クリューガーSS少佐の役割を代わりに演じていると思っていいだろう。つまりヘルツォーク少佐は架空の人物である。その他にも登場人物は多くが架空の人物である。映画が面白ければこんなことはどうでもいいことかもしれない。

ナチが"できるユダヤ人"を重宝し、死の最期の瞬間まで酷使したというのはこの映画で描かれるとおり。有能とみれば使いつぶす。その極端なまでの効率重視の民族性はこの映画でもよく描かれている。

手段を選ばず利用し、嘘と甘言を用いて生存の可能性をちらつかせ、残酷に包囲し、結局皆殺しにしちまう。その恐ろしさはヘルツォーク少佐の一見ジェントリーな態度にもよく表れている。悪魔は嘘がうまい。それを如実に表している。

ユダヤ人たちは働いていれば生き残れる、そう信じていた。そう信じるしかなかったのだが。うまくやれば飯も食えるし酒も飲ませてくれる。卓球台まで娯楽にとプレゼントしてくれた。ナチに従う方が得だ。こういう状況に投げ込まれれば99パーセントの人間がそう思うだろう。抵抗を拒否するだろう。抵抗すればすぐ殺されるし、仲間まで処刑される。家族も危ない。こんな状況で自分一人の正義を貫ける人間はいくらもいまい。だがこの映画のある登場人物はそれをやってのける。そこに感動できるか嘘くさいと感じるかは人に依るだろう。

個人的にこないだザクセンハウゼン収容所の跡地に旅行してきて、ベルンハルト作戦の展示もあったものだからこの映画には思い入れがある。人間の描き方がリアルである。SS監視部隊は極悪で卑屈で粗暴だが、ユダヤ人の歌を聴いて本気で感動したりもする。悪人だが人間として扱われている。この手の映画では親衛隊は非人間的なステレオタイプに堕す傾向にあると思うが、やはりドイツ人はドイツ人が描いた方が良いということだね。サボタージュを続ける秘密チームがどうなってしまうのかは皆さんの目でご確認ください。良い映画ですよ。


カール・マルコヴィクスはドイツが誇る名優だろう(オーストリア人だけど)

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