>>戦争映画中央評議会

野火

塚本晋也版「野火」

 

グロ度

100

死体度

100

リアルな戦場度

100

総合得点

90


これは2015年では一番楽しみにしていた映画だ。市川崑の59年の映画のレビューもしたためてある。参考にどうぞ。

野火(市川崑)

 

これはなんと85分ぐらいしかない低予算の自主映画だ。塚本晋也監督ほどの巨匠が、いつまでたってもスポンサーがつかず、かなり苦労されたようである。

日本映画は基本的にダメだが、戦争映画も例外ではない。なぜダメなのかなどという話は今回はちょっとしないが今回のこの塚本晋也版「野火」だが、際立っているのは、その残虐描写である。18禁なんかな?これ。確かそこまでの年齢制限はなかったと思うが、これは相当にグロい。

特に戦場のそこかしこに散らばる死体の無機質さはかなりの精度で再現されており、ワタクシも残酷な戦場写真をかなりたくさん見てきたが、これはかなりリアルである。なんというか、その辺で単に腐っている、という感じが非常に再現されており、その数もすごい。ここまで徹底してこの辺を再現した戦争映画は記憶にない。この時点で歴史に残ったといえるだろう。

しかも、ワタクシがいつもうるさく言っている、「兵器の破壊力」という点についてだが、これもなかなか良い。原作でもおなじみの、パランポンへ向かう道、米軍の機関銃陣地を横切るシーンだが、ぼろきれのようになった兵隊がしっちゃかめっちゃか肉の噴水と化し、手足はちぎれ飛び、脳も内臓もかき回され、踏みしだかれ、もうめちゃくちゃだ。しかしこれは妥当な表現というか、おそらく米軍の機関銃はブローニングM2だと思うのだが、本来これは航空機関砲であり、人間を撃つとこれぐらい人体はめちゃくちゃになる。これを真面目に再現した映画は、「ランボー最後の戦場」などがある。

おなじみの飢餓の描写に関して、 この辺の人間の暗い本性を描かせれば、これは監督の本領発揮であろう。いいあんばいにホラーチックに撮られている。特別驚きもなく、原作通りの顛末を辿る。特に秀逸なのは、俳優全てが惨めに痩せていること。あばら骨が浮き出ていることがこれほど重要になるシーンもないわけで、痩せていることは世界観を貫徹させる意味で重要だ。「飢餓」のシーンで俳優をきっちりエキストラまで痩せさせるのはかなり難しい。この映画は幸か不幸か登場人物が少ないため、うまくやれていた。

演出や音楽に関しては、いつもの塚本節と言って良いのかわからないが、独特の癖のある奇妙な世界観を展開している。戦争映画として素晴らしいな、と思ったのは俳優の汚し方、だ。顔も軍服も真っ黒で、歯まで入念に汚してある。(こんな当たり前の役作りが、日本映画はからっきしだめなんだ)原作キャラクターのイメージぴったりの配役、特にリリー・フランキーと、中村達也の伍長がすごくいい感じだった。

虫に喰われるシーン、特に蠅のシーンは原作のほうがはるかに凄惨で、この映画も滅茶苦茶陰惨なのだが、現実の戦場には及びもしないのだろう、当然ながら。これは監督が舞台挨拶でも仰っていた。

「グロさ」と「兵器の破壊力」という二点で超高クオリティであり、いつも日本の戦争映画を観てると、あーじれったいな!おれにやらせろ!と思うのだが、この映画に関しては何も言うことなし。こうして欲しかった、などもない。完璧に満足した。とはいえ、戦闘シーンが少なく、娯楽性が全くないため、一般受けは無理だろう。だが、本当の戦場の空気(それも超絶の負け戦)をこれ以上きっちり再現した映画は、世界でも例の「スターリングラード」ぐらいじゃないかと思うので、ようやく良質ドイツ映画に並ぶ、日本代表の厭戦映画ができたな、と感慨しきり。70年か、、、かかりすぎだろう。新鋭があとに続いてくれさえすれば日本映画界の将来も明るい。これを神棚に置いて若手の皆さん、気合い入れてがんばって。

 

 

 

 

 

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