鬼が来た!

中国を見直した

迫力度 100
酒塚猪吉度 100
救いがない度 100
総合得点 99

これはまたすごい映画です。モノクロですが2000年製作の中国映画です。カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞しています。そして中国共産党当局によって発禁処分を受けた問題作です。オープニングからしてすごい。「気をつけえええぇええ!!」というでかい日本語と共に軍艦マーチがかかり、軍艦旗を背景に「鬼子来了」ですよ。開幕2秒でどんな反日映画が今から始まるのかと期待と不安で一杯になります。


軍艦旗をデカデカと背景に「鬼が来た!」 一体何が始まるのか期待と不安。


海軍の軍楽隊が中国の村に降りていきます。1945年、日本軍占領下です。


シナの子供たちはこの軍艦マーチがお気に入りです。つい体をくねらせて音頭をとってしまいます。


隊長もシナの子供がお気に入りです。飴をあげたり手品をして遊んであげたりします。


ここまで観ると「おお美しい日中友好映画?」という感想です。そして話はここから始まります。

ある中国人の夫婦(正確には恋人?)の下に何者かが訪ねてきてでかい麻袋を二つ置いていきます。銃を突きつけ、「日本軍に見つかるな!」と脅します。脅された夫婦はわけもわからず麻袋を受け取る以外にありません。


袋の中には人間が・・日本兵と中国人の通訳です。日本兵は香川照之です。

わけもわからずこの二人を養うことになってしまった夫婦は村の人に助けを求めます。村の長老の指示でこの夫婦がしょうがなく養います。日本兵の名は花屋小三郎、陸軍の軍曹で何十人もシナ人を殺しています。生き恥を晒して捕虜になったことが許せない彼はヤケクソで「殺せ!この支那畜生!」叫びまくります。通訳はそれをことごとく「殺さないで!誰も殺してません!」と訳します(笑)。
小三郎は考えた挙句、中国人を最も怒らせる形で口汚く罵れば自分を殺してくれるだろうと考えます。彼はとにかく捕虜にならないという戦陣訓を守ろうと死にたがっています。しかし通訳は巻き添えを食って殺されたくないので友好的な言葉を罵倒する言葉として教えます。


「お兄さんお姉さん明けましておめでとうございます!!」
(注:彼は中国語で罵っているつもりなのです)


夫婦はそれを聞いてまんざらでもない様子です。ちなみに左のオッサンがこの映画の監督です。


ご馳走を用意してくれました。

小三郎はどうして罵倒しているにもかかわらず、この夫婦は優しく食事や下の世話までしてくれるのか・・と感動して恩に感じ始めてしまいます。こうして小三郎は食料をお礼に贈呈することを条件に皇軍の部隊に戻してもらうようお願いします。村の人達もそれなら悪くないと小三郎を部隊の基地まで送り届けて上げます。

ここまでが前半だとしたらこれ以降は後半です。ここまでは日中の滑稽な友好風景を描いていたように思います。コミカルで安心して観ていられました。しかしここから雰囲気が一変します。小三郎の隊長の酒塚猪吉が登場するからです。名前からして反日的な名前です。中国語では最大の罵倒文句である「猪」が入っていることからも明らかです。というか花屋小三郎というのも変な名前ですが。。。


基地に戻って「ただいま帰ってまいりました!!」と元気に挨拶する小三郎ですが・・。


このオッサンが黙っていません(ToT)


こわーー・・・

この隊長は相当怖いです。こんな怖いおっさんは実生活では前勤めていた会社の上司ぐらいのものです。


生きて帰ってきたことを責められてリンチを受けます。何と残酷なのでしょうか。


「申し訳ありません!!」
「申し訳ないで申しわけが立つと思ってんのかあ?!」


とにかくこのおっさんはすげえ迫力です。誰がどう見ても昔の日本の軍人です。ここまでリアルにやってくれるとは・・。
自衛官もこれぐらいの迫力が欲しいものです。

猪吉隊長は小三郎が自分を救った見返りに食料をお礼に与えるという契約を結んだことを聞いて激怒しますが、「皇軍は信用を重んじる!!」と約束どおり村人に食料を運んでいってあげることにします。


ついでに村の警備隊の海軍部隊と交歓会を開くことにします。(冒頭の軍楽隊です)


陸軍は走って村まで行きます!すごい体力だが輸送車ぐらいないのかな!?


戦地で陸軍と海軍が出会った場合に陸軍側が「万歳」を連呼する慣習があるのか?どうかは知らないがそういう細かいところまでよく調べています。たいしたものです。

ここからこの映画の衝撃的なクライマックスが始まるわけですが、全ての複線を粉々に打ち砕くどんでん返しの展開には舌を巻きました。以下は映画を観ようと思う人はみないほうがいいです。


交歓会では村人も交えて日中友好が繰り広げられます。共に飲み、歌い皆楽しそうです。


しかし猪吉は違いました。小三郎を拉致した奴を連れて来いと村人を尋問しますが村人は「そう怖がるな」と馴れ馴れしく頭をなでたりします。


小三郎はそれを見て「ああやべえよおなにやってんだよお」と考えています。
そして次の瞬間このシナ人を「無礼討ち」にしてしまいます。


次の瞬間場は一転、賑やかな宴会は瞬時に「民間人を取り囲む占領軍」の図式に変わります。


「皆殺しだ!!一人も残すな!!」


さっきまで陽気に歌い、皇軍と知り合えたことを喜んでいた爺さん、殺されます。


村人はどうしようもないです。わけがわかりません。


子供もいつも飴をくれる優しい海軍の隊長に助けを求めます。


それを観て「すっかり近所の世話焼きおばさんですなァ」と揶揄する猪吉。


それを聞いた隊長(野々村さんといいます)、「あっやべえ」という顔をします。


んで、そんなことないよーとシナ人の子供を斬殺してしまいます。なぜこうなってしまうのでしょうか・・。


・・・・・・


それを尻目に淡々と演奏を続ける軍楽隊が不気味です。


爺さんの腕を切り落とし「火に投げ込めェ!!」


「焼き払えェ!!」


「おおー!!」


惨劇を終えるとここで猪吉から重大発表です。何と既に日本はポツダム宣言を受諾し、降伏した後でした。
(花屋が戻ってきた時点で既に武装解除命令が出ていたようです)


炎に包まれる村・・。


時は流れ、国民党の軍隊とアメリカ軍が進駐してきます。
現地の日本軍は彼らの指揮下に入ります。


花屋を預かった夫婦の夫の方は復讐に日本兵を殺しまくります。そこを国民党に取り押さえられ、国民党は元日本兵捕虜によって処刑するよう命令します。そこで皮肉にも花屋が選ばれるのです。


首を落とされると画面はカラーに。
生首がにやりと笑って終わり。

この映画は結局何が言いたい映画なのか良くわからないところが魅力的です。こんなに映画の趣旨について色々思考したのは久しぶりでした。「鬼が来た!」の「鬼」が一概に日本人を指しているわけでもないような気がするのです。なぜなら花屋を連れてきた人が誰なのか最後まで謎のままです。一体何を象徴しているのか?平和に暮らしていた村に災いを運んできたものは何なのか?明確な答えが用意されていません。一方で戦時における人の極限状態、全体主義の滑稽さ、みんながやるならおれもやる〜〜っという日本人の習性をうまく描いていると思いました。特に村人を虐殺するシーンなんてリアルすぎでしょ。急転直下に殺戮が開始され、わけもわからず命令を拒否できず村人を殺しまくる兵士たち・・・アレこそ日本人ですよ。たとえおれでも現場にいたら心を痛める暇もなく命令どおり殺しつくし奪いつくし焼き尽くすでしょう。あんな恐ろしげな隊長や上官に後でリンチされることを思えば拒否なんてできようはずもない。ここは変に納得させられてしまいましたね。もちろんこの話はフィクションですし、というか大嘘ですが、妙に生々しい日本兵の描写に99点あげましょう。

共産党に発禁処分を受けている理由が良くわかりませんが、多分、皇軍に媚びて阿ってる情けないシナ人の姿が癇に障ったのでしょうか。ずーーーっと抗日闘争をやっていたと教えたいのではないでしょうか。一方日本兵は子供に優しかったりするし、これでは格好がつかない。しかしこの映画で語られる偉そうな日本人、情けないシナ人の姿が限りなく真実に近いものだと私は理解している。とりあえず「炎628」と「シンドラーのリスト」を掛け合わせたような映画である。監督は5年かけて当時の日本兵の研究をしたそうな・・。ちなみに猪吉演じる澤田謙也は撮影中もリーダー格だったそうです。人は見かけによるんですね・・。日本兵役は全て日本人。実際に軍事訓練を受けて訓練なのか撮影なのか何も知らされない異常な状態で5ヶ月以上拘束されていたという・・。この日本人エキストラの血のにじむような努力あってこその映画です。中国の反日映画だからと言って敬遠するのはもったいない。名作だと断言します。実に自然にDVD買ってしまった。

 

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