>>戦争映画中央評議会

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ザ・パシフィック

飾り気皆無の憎悪の応酬

 

醜さ度

100

救いのなさ度

100

教訓の見出せなさ度

100

総合得点

95




トム・ハンクス、スピルバーグのコンビによるテレビシリーズ、「ザ・パシフィック」。これには複雑な思いがありレンタル屋でも長いこと新作で一泊二日でしかかしてくれないしで、長いことスルーしていたのであった。しかしこのたび準新作にいつの間にかなっていたから借りたのであるが、一気に見通すことができた。

トムハンクス、スピルバーグのコンビと言えばプライベートライアンとかバンドオブブラザースと言えば語ることは大幅に省略されるだろう。特にプライベートライアンは戦争映画に革命をもたらした作品である。それまでタフなヒーローが白い歯をむいて爽やかな笑顔を振りまきつつアクションをいきがっていればそれで良かった幸福な(おれはそういうのは大嫌いだが)時代は終わりを告げ、ひたすら現実的で等身大で情緒的な主人公が地獄のごとき戦場でガタガタ震えて自軍の戦争犯罪を目の当たりにし時には自分も悪いことをして、勇気を振り絞ってがんばってみたらちゃんとしっかり死んじゃったという悪く言えば辛気臭い戦争映画が主流となる不幸な(おれは大好きだが)時代が始まるのであった。



ランボー最後の戦場は幸福な時代と不幸な時代の良いところをあわせもつ傑作の戦争映画で、アレを観た時おれは戦争映画の2度目の革命が訪れたな、これからまた時代が変わるなと確信したものだったが、あれに続く作品は残念ながら多くはない。

プライベートライアンは傑作と言うことで流石に異論はないけれども、一方、バンドオブブラザースはと言えば最も嫌いなテレビドラマの一つと言える。若いころは本当にこれが許せなかったものだ。アメリカのドラマなんだからアメリカ人の活躍が主流になるのは当たり前だが、あのころはとにかくとにかく本当に心の奥底からおれはドイツ軍が大好きだったので(笑)、ドイツ兵がばったばったとタフなアメリカヒーローにやっつけられちゃうサマには全く納得できず、けちょんけちょんにけなしまくったら本当にたくさんの苦情が来たものだ。ネットの世界広しといえど、バンド〜をけなしまくっているレビューサイトはおれんとこぐらいだと思う(笑)。とにかくこれは世間の評判たるや抜群に良いのである。おれは2回ぐらい観たけどやはりどれ1つとっても好きなシーンはない。おれはストーリーや役者の演技などではなく、とにかく戦闘シーンの激しさに目を惹かれるタイプだからこれには大して観るべきものは見つけられないのだ。

そんなわけでザ・パシフィックは件のバンドオブブラザーズと同じコンビのプロジェクトなわけで、大しておもしろくねえんだろうな、と思ったのですな。観る前は。

ドイツ兵が射的の的になって怒り狂うのはおれがキチガイだからということでそれは問題ないと思うのだが、日本の兵隊さんが射的の的になってアメリカ兵さんカッコイイゼ?をやられてしまうと今度こそ本格的に嫌な気持ちになりそうだと思ったわけだ。だってそうだろ?嫌だろ?

しかしな。これは結論から言うと本当におもしろいテレビドラマだった。制作費2億ドルか・・坂の上の雲が250億円だったかなあ・・。やっぱり金がかかってると戦争映画はおもしろくなりますな・・戦闘シーンがとっても激しくて良かったですよ・・。それに
アメリカ兵が悪くて良かった。容赦なさ過ぎで最高でしたよ。実際これよりひどかったらしいが、アメリカ人に見せるテレビドラマでよくもここまでやったな・・こりゃあ坂の上の雲の方がよっぽど好戦的で右翼ドラマのようにも思えてくる。制作費が近いから比べてしまいますな。まあアレはアレで好きな作品ですが・・。

どうも、スピルバーグ、トムハンクスコンビ(以降スピトム)は
イーストウッドの硫黄島シリーズに随分感化されているように思えます。硫黄島シリーズは本当に素晴らしい試みで、あんな試みは今後真似する人は確実に現れないと思う。プライベートライアンが歴史を変えた作品ならば、硫黄島〜は歴史に残る作品だと思う。日米双方の視点で同じ舞台の映画を2本撮るなんて今考えても本当に偉大な試みであった。戦争映画というものが人々に与える影響を知り尽くした上での英断であった。戦争に英雄はいないという信念を完全に貫いた歴史に残る一作だ。

スピトムもこういう試みが成功したのを受けていっちょ真似してみるか!と思ったかどうかは別として話のプロットやストーリーに似たところもあるし、戦争での英雄像を排除して自国の戦争犯罪に焦点を当てたりするところは
ブライアン・デ・パルマイーストウッド的だといえる。ブライアン・デ・パルマは言い過ぎかもしれないがとにかくアメリカ兵が悪いんだ・・。まさしく殺人集団の愚連隊なのだ。一方日本側は日本側で決して降伏せずヤケクソでもうむちゃくちゃやるわけ。民間人を盾にしたり子供を使ったブービートラップを仕掛けたり銃剣やポン刀でヌオオオオ!!!としゃにむに突っ込んでくるのだ。手段を選ばず全力で殺しに来る。殺すためにはどんなことでもやる。絶対に降伏しない。アメリカ兵はそんな狂気なのか勇敢なのかアホなのかさっぱり区別がつかない日本兵をめっちゃ恐れてるし恐れてるからこそ徹底的にこれまた徹底的に殺すのよ。殺したり殺されたり殺しあったり殺されあったりしてるの。そして憎んでいる。差別用語のオールスターだし嬲るだけ嬲って殺すし、遺体から金歯を抜いたり物盗んだり損傷させてもてあそんだり、捕虜にできる状況でも躊躇なく殺すし。二言目には「He is JAP」と言えばどんな蛮行でも正当化できてしまうし。人間の憎悪と憎悪の衝突がここまで醜い形で飾られることもなくむき出しになっているのは珍しいと思う。戦争の根本、闘争の根源はやはり憎悪だと思う。日本の映画や反戦ドラマにはこれがないんだ。どこ掘っても欠片も見つからないんだ。それはやっぱり、不自然なことなのだ。憎悪なくして、人は人に対して暴力を行使することはできないのではないだろうか。だからこそ戦時に敵国を悪し様に汚い言葉を使って貶めそれを煽るのではないだろうか。それは日米に、世界各国に共通していることなのだ。

だいたい戦争映画ってのはプロパガンダだから、どっちかが爽やかで高潔で大儀もあっていい人陣営で、どっちかが民間人殺したり後ろから撃ってきたり卑怯なんだが、この作品はとにかくどっちも最低なのだ。最低の泥仕合をそれこそ泥まみれでクソ暑くて雨ばかり降ってる太平洋の島々でやっているのだ。
その醜さ、救いのなさ、教訓の見出せないことと言ったら前代未聞である。誰も幸福になれそうもない一つとして得るものなさそうな、どうにもならない最低の映像である。しかしこれこそが地獄の戦場と呼ぶにふさわしい太平洋戦争=大東亜戦争なのだろう。ようやく観たかった物が観れた気がしたのであった。

むぅ・・気がついたら大絶賛しているな・・。

今回は第1海兵師団の将兵が主人公である。主人公級の人物が3人ほどいて入れ替わり立ち代りで場面場面を演じる。

主人公の一人「ユージン・スレッジ」  「ペリリュー・沖縄戦記」というこのシリーズの原作を書いた海兵隊員。この小説は実録従軍日記というだけでなく、当時の瑞々しい青年が、戦争を、敵を、アメリカを、どのように見たのか率直な感想が淡々とつづられている。飾ることなく日本兵の卑劣さ、醜さ、恐ろしさを綴り、その敵と闘争した日々を詳細に記録し、戦争の無意味さを訴えかけた。名著であるため是非一読をすすめる。敵から観た日本兵の姿に、我々も驚かされるはずだ。敵として対峙した日本兵がいかに恐ろしく手段を選ばず襲ってきたか、そして射撃や砲撃をいかに的確に駆使して戦っていたか、たった数人で死を覚悟して夜襲をかけてきたか、全く降伏する意思も示さず勇敢に戦ったか、そして我々が学校やメディアから教わったものとは異なり、最強の米軍と想像以上に対等に戦っていたことに驚愕の念を禁じえない。敵である海兵隊員が苦渋を舐めるその姿から、我々がその姿を見失った「日本兵」というものの輪郭を推測する一助とできるのである。

第1海兵師団と聞いた時点でもう戦史が好きな人はピンと来ると思う。実際おれは観る気ほとんどなかったけど第1海兵師団と知った時点で観ようかなと思った。どう考えたってアメリカ軍の楽勝ムードで終わることはないだろうと思った。そしてハイライトはペリリュー島になるだろうと言うことも・・。

予想は気持ち悪いぐらい的中し、10話中3話がペリリュー島での戦闘にまるまる使われている。
これは硫黄島、沖縄戦が各1話ずつしかないことを考えればけっこう長いと言えるだろう。(ちなみに1話、2話はガダルカナル戦だ)

日本軍はバンザイ突撃ばかりしていっぱい死んですぐ負けたと言うのが定説である。日本では例外なくそう語られる。しかし実際すぐ突撃してすぐ負けたのはサイパン戦ぐらいのもので、ペリリュー、沖縄、タラワ・マキン、そしてご存知硫黄島では突撃なんて本当に最後の最後までやらなかったと言う。ひたすら要塞やトーチカ、洞窟、岩礁やさんご礁にこもってのゲリラ戦だったのである。だからこそ米軍は大損害をこうむった。日本兵は意識を失ってとか朝鮮人以外はみんな見事に死んでいる。捕虜もほとんどない。絶対降伏せずの徹底的な殺し合い。

ペリリュー戦で第1海兵師団は大出血し全滅判定を受け後方部隊と交代している。となれば、少なくともこのペリリューの3話はおもしろいんじゃないかな〜と思った。

前編でも述べたようにここは本当に素晴らしい。まさしく地獄である。だが、ここにたどり着くまでがとても長い。イーストウッドのアレでもあったが、戦時国債を買わせるために主役の一人が国に帰ってPRをするエピソードや、オーストラリア娘との恋愛など死にたさ200パーセントのエピソードが約4時間にわたって語られるのだ。第5話の途中ぐらいまで・・実に長い。これはツライ。

ペリリュー島がハイライトになるということを知らない観客がいたとすれば、これは途中で観るのをやめてしまうレベルだと思う。実につまらない。そしてくだらないのだ・・。

まあテレビドラマですからずっと戦闘というわけにも行かないでしょう・・。これは些細なことです。一つ言えるのは、このドラマは後半おもしろくなると言うこと。途中で観るのをやめるのはもったいないです。

ペリリューにしろ、硫黄島にしろ、沖縄にしろ、今回の作品は米軍をかっこよくは描いていない。もちろん日本軍の描写は少ないしあっても悪く描かれている。
どっちも醜くどっちも悪い。どっちも最低だ。勝者の側がこう描くのはとっても難しいことだと言うのはなんとなくわかる。特に硫黄島戦なんていつもの旗立てるシーンなんて欠片も登場しない。ペリリューもいつのまにか終わってしまう。沖縄戦もそうだ。米軍が輝かしい勝利を収めるプロセスや結果は全く映像化されていないのである。これはこれまでのスピトム戦争作品にはなかったことだ。これまでは戦争のひどさを描いてはいたが結局のところ最後には正義の米軍が華々しく勝利を収めてきれいに終わるような筋立てばかりだった。しかしこれは尻切れトンボのように各戦闘シーンが終わり、場面も切り替わる。あっけなく。最終話にいたってはもういきなり戦争に勝ったってことになってて兵隊が国に戻っていくところを描いているだけ。ジャンプの売れない漫画が打ち切られたみたいなあっけなさを感じさせる。

総括すると、このドラマは、太平洋戦争で米軍はひどい目にあいました。日本兵はけっこう強かったです。だから徹底的にぶっ殺しまくりました。僕もいっぱい殺しました。戦友もいっぱい死にました。ほんとツライばかりで何も楽しいことない戦争でした。
日本人を殺すのだけはけっこううまくなりました。

というところで落ち着く。これだけで十分だろう・・。

個人的に気に入ったのは沖縄戦の第9話。こりゃあひどい・・まさしく血で血を洗う憎悪の応酬。どっちも最低だ。乳飲み子を抱えた母親にダイナマイトが巻きつけられ、米軍に対するブービートラップにするシーンがある。母親は「タチケテクダシャイー」とか言いながら米兵に赤子を渡そうとする。戸惑う米軍部隊のど真ん中で炸裂するダイナマイト。始まる日本軍の機関銃による奇襲。米軍は大損害をこうむる・・これはネットで方々から大批判を受けているシーンだ。
いわく捏造であると言う。原作にないと。

・・しかし太平洋の戦場は一切の慈悲なき狂気の殲滅戦であった。お互いがお互いを捕虜にすることはほとんどなかった。捕虜になれば拷問されて殺される・・お互いがそう考えていた。そして民間人もそう教えられていた。婦女子は強姦されて殺される・・嬲り殺しにされると。そしてそれは決して大袈裟なプロパガンダなどではなかった!アメリカ人と日本人はお互いを心底憎悪していたし、民間人への暴力もたびたび起こった。太平洋戦線に最も近い戦場・・それは独ソが絶滅戦争を巻き起こした地獄の東部戦線以外は思い浮かばない。

・・話を戻そう。確かにこのシーンは原作にはない。しかし戦争映画を観る上で、いや、政治や天下国家を語る上で気をつけたいのは、僕らはついついマクロな視点でモノゴトを認知し捉え語ってしまう。日本ちゃんとか中国くんとかネットで国を萌えアニメにしたてて政治を風刺する悪い冗談がある。それで天下国家を判った気になる人がいる。

だがもっとミクロの視点で捉えるべきなんじゃないだろうか。これは政治のこと全く興味ないお兄さんお姉さんの方が普通に自然にできたりするんだよね。当時の個々の人間が何をしてたか何をしなかったかなんて平成の我々が知るよしもないだろう。当たり前のことじゃないの。これは確かに本当にあった話をベースにしているだろうが、所詮は娯楽のテレビドラマなのだ。民間人を虐待したり戦術に利用したり卑怯なことをしたり・・あったかもしれないしなかったかもしれん。いい人もいただろうし悪いことした人もいただろう。なのに我々はすぐこの手の過激な描写を観ると
「日本人は残虐だ!」とか「これは捏造だ!本当はいい人ばかりだった」とかなんとかぬかす。もっとミクロな視点で物事を捉えましょうよ。これをみてすぐ「日本人は・・」とかマクロな視点で物事を捉え語るのは非科学的だし政治宣伝に利用されるだけなので、ああこういうこともあったのかなあ、でも嘘かもしれないなあ、でも似た事例はあったのかもなあ、とかぼんやり考えてみるぐらいでいいと思うんだよね。おれはこのシーンは死に物狂いで手段を選ばず殺しに来る日本軍の凄絶さを感じるシーンだと思ったけど、そのことで日本人として恥ずかしい!とか勝手に日本人を代表するようなことは欠片も思わなかったけど・・。

まあ↑の小言は全て自分に向けたものです。色んな人がいて色んな考え方がある。それでいいとも思うし、好き勝手言ってるのをみるのもおもしろいし、どんな意見でも山の賑わいですからね。このドラマはおもしろいしよくできています。それで十分ですよ。


ペリリュー島の飛行場での会戦。こんな恐ろしい思いをしたのははじめてです。。


ガダル・カナルで死に遅れた哀れな日本兵へのとどめの一発。嬲り殺すのは野蛮だぜ?


ダイナマイトを巻かれた乳飲み子を抱いた女性。次の瞬間爆発する。




 

 

 

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