>>戦争映画中央評議会

最愛の大地

憎悪の系譜

 

集団レイプ度

100

暗い度

100

鬱度

100

総合得点

85


アンジェリーナ・ジョリーが監督したということで劇場公開前は一時期話題になっていた。しかし映画公開後はまったく音沙汰がなかった。というかあまり話題にのぼらなかったというべきか。

それもそのはず。この映画はかなりえげつない
性的暴力や人権蹂躙がリアルに描かれており、セクシーな女優のイメージでミーハーに観にいくと肩透かしを食うのは確実である。

男女の異民族間の愛だの官能だのが宣伝文句で使われていたが、これは破滅的見当違いであり、売るために魂を売り渡した映画会社のトラップであるため注意を促したい。

この映画は愛だのそんなのとはまったく真逆な、ぬぐいがたい民族間の憎悪、決して消えざる血の来歴に対する嫌悪と差別感情。そして
それらが未来永劫続いていくこと。それを描いている。これらが地獄のような戦争をもたらしたことを訴えているのだ。

ボスニア紛争を描いた映画としては網羅的であり、開戦からNATOの爆撃開始まで時系列で進んでいく。その間行われたセルビア軍によるムスリム系市民に対する迫害とジェノサイドを生々しく描いている。

まあ、ここでボスニア紛争がどんなだったかなどと講義することもできないので、映画の話だが、冒頭、セルビア軍による強制連行で収容所に入れられる女たち。この女の一人が主人公である。どうにも最悪の世界で、バルカン男の獰猛さをたっぷり見せつけられることになる。そこは暴力、虐待、奴隷化、集団レイプが吹き荒れる、おおよそ女性が想像しうる最も過酷な世界であった。


おまえらはファ×クのために連れてこられたんだおら〜


ひい〜たすけて〜!


居並ぶ女性陣を眼前に公開レイプ!よくちんこたつな・・

主人公の女性はその中の一人のセルビア将校と開戦前から恋仲であり、彼の厚意で無秩序な暴力から身を守ってもらえることになった。そんな幸運にめぐまれたものの、ムスリム人はセルビア人にとって虫ケラ以下の存在であると同時に、長年憎み合う民族の宿敵。第二次大戦の頃、いやもっと前から脈々と連なる憎悪の系譜。憎しみの連鎖は永遠に終わらない。

主人公もムスリム人である限り、やはり危険なのは変わりない。この特権を得た主人公もやがて理不尽な暴力にさらされることになる。

無惨という以外にないセクシャルバイオレンスの連発なので、女性は観る前に注意を要する。こういう映画だと知ってから行くべきだろう。


彼にだけはこんなこと知られたくないわ・・

戦闘シーンもエグい。
小屋に立てこもるムスリム兵たちに、ムスリム女性を人質に文字通り盾にして降伏を迫る。で、火炎瓶投げつけて煙でたまらず出てくるとグヒヒヒ!と短機関銃乱射して皆殺し。
なんて戦争!いかがわしい正義の欠片すら見つからないなんて!!(ナウシカ調に)


降伏しろやおら〜


人間の盾・・なんて卑劣な・・


火がかけられると・・


たまらずでてくる。ひい!助けて〜!


グヒヒヒヒヒ♪なんて楽しそうなお顔・・頭抱えてる女性が主人公です(笑)


セルビア将校はムスリム女性を愛しているのだが、周囲がそれを許さない。いわく
「卑しい血の女」である。周囲にムスリム女をかくまっていることがバレると、裏切り者でない事を示すため自らの手で粛清せねばならなくなる。だが、できない。どうすればいいんだー!と思い悩むわけである。

ではムスリム女はセルビア将校をどう思っているのだろう?同じく愛しているのか?それとも生きるために利用しているだけか?ラストはこれをはっきり示している。
民族間の憎悪が個人の愛にまさってしまった。まったく救いのないラストで、これが甘い官能ドラマとは程遠いことがよくわかるのである。

この映画は欧米社会の常でセルビアだけを悪と描いているようにも見えるが(そのような国策で爆撃までした国の映画なのだから)、やんわりとどの陣営も極悪だったことが描かれている。第二次大戦の
ナチス武装SSのムスリム師団の話まで登場したのには感動(※)。脈々と連なる憎悪の系譜を感じさせてくれた。

※ヒトラーのナチス親衛隊の武装部門にはバルカン半島のイスラム教系民族によって構成された外人部隊が存在した。主にバルカン半島のゲリラ掃討任務に従事し、指揮系統はデタラメ、ドイツ語もまともに理解できず、血の匂いのみを頼りに民間人の虐殺をしまくった愚連隊であった。

特に、ある兵士が「カミさんに子供ができました。三ヶ月です。隊長殿。おれたちが戦えばおれのチビは戦わなくてすむんですよね?」と問いかける。これは涙なしにはみれない。戦争を終わらせるために戦う。憎しみを断ち切るため、禍根を残さぬため。古今東西このような大義を掲げ人々は戦った。だがこのようにして憎悪は未来永劫受け継がれていく。
戦えば戦うほど戦いは終わらない。

ボスニア紛争を描いた映画としては、「セイヴィア」という映画がこの映画を補完する意味でも重要作品となるだろう。テーマはかなり似通っている。アレはセルヴィア女性が被害者であり、極悪非道なのはクロアチア軍のウスタシャ民兵とムスリム軍である。併せて観るとこの紛争の複雑さがよくわかるかもしれない。「セイヴィア」が微かな希望を感じさせる終わり方であったのに対し、こちらは正反対の
考えうる限り最低のラスト。ボスニア紛争に興味がある人は是非観るベキ映画だろう。なんか色々批判があるそうだが、私はこの映画はとても気に入っている。(主役女性の感情表現が乏しいことに批判があるが、感情豊かにふるまえる環境じゃないだろうに。それに感情表現が乏しいからこそラストで民族間憎悪の根深さ手強さを提示できるんじゃないのかな)

一つ残念なのは言葉が全て英語であることだ。いっそDVDで日本語吹き替えで観た方が雰囲気に浸れるかもしれない。有名キャストを使わなかったことには万雷の拍手を送りたい。私はDVDを購入しようと決めた。ジョリーたんには今度は第三帝国を舞台にした無惨話を期待したい。似たような話になりそうだが‥

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