戦火の奇跡 〜ユダヤを救った男〜

矢十字党の蛮行を描いたほとんど唯一の映画

イタリア語度 100
感動度 80
血も涙もない度 100
総合得点 70


イタリアのテレビ映画で前後編で三時間以上にもなる長尺の作品である。

イタリアのテレビ戦争シリーズ全般に言えるのだが、
誰でも彼でもイタリア語というどうにもならない部分があり、なかなかドップリ世界観にひたるのは難しいかもしれない(テレビシリーズなんだからしょうがない)。これも御多分にもれず、ハンガリー人、イタリア人、ドイツ人、スペイン人とみんな仲良くイタリア語だ。んなわきゃないだろ!と思うのだが、これはいかんともしがたい。海外ではそこまで雰囲気は重視されないのかもしれない。残念だがこれは今後も改善されないだろう(このイタリア語は吹き替えのようである。口と台詞があっていない。だとしたら本当にしょうがない。あくまでイタリア人向けのドラマなのだろう)。

イタリア語はランダSS大佐ですらイマイチだった言語だというのに。愚痴はこの辺にしよう。

ストーリーはまさに1944年3月から始まったハンガリーのホロコーストである。アドルフ・アイヒマンの特殊部隊や、矢十字党の無差別殺戮に対して命を救うべく奔走した人物として、ラウル・ワレンベリが圧倒的に有名なのだが、イタリア人にも同じように尽力した人物がいたとかで、その人が主人公である。名を
ジョルジュ・ペルラスカという。

イタリア小説、
「壊れたヨーロッパ」でも語られるが、イタリアはナチの狂気の人種政策には大反対で各地でサボタージュや妨害工作など積極的に行っており、ナチ占領当局はそれに終戦まで悩まされたという確かな史実がある。例えばクロアチアの最初の絶滅収容所を閉鎖に追い込んだのは占領イタリア軍である。

よってこの話は確かに真実だと思うし、(絶対にこうだとは言えないものだが)説得力を感じることはできる。

また戦争映画的見所として、
この映画は矢十字党の極悪な所業を映像化したほとんど唯一の作品である。確かに矢十字党員がイタリア語を喋っているのはかなり変だが、物語自体は迫真のできであり(ちょっとだらっとしているところを別にすればだが)、彼らの着用している黒い軍服や腕章、装備品はとても興味深い。のめりこめればかなり感動できるだろう。

ペルラスカがこう、世界がユダヤ人に対して背を向けていた時代に、ユダヤ人は同じ人間なんだ、と平等に扱う、敬意を払う態度を全くぶれずに行えるのは、フィクションならちっとも感動しないが実話なら本当にすごいことである。

それに比べて矢十字党の極悪ぶりは普通ではない。ペルラスカやワレンベリのような人道者がいくら死力を尽くしても圧倒的悪意の前に救える命はごくわずかだ。まったくためらいのない殲滅に容赦のない大虐殺。唖然とする。

まあ、もう少し暴力描写に容赦がなければ良かったのになあと思わないでもないが、一般的には十分残酷だろう。特にドナウ川の岸辺で二人一組で縄で縛り上げて片方の頭部にのみ鉛玉をぶち込み、絶命した死体の重みでもう一人は川に落ちて溺れ死ぬというやり方、効率重視のなんとも無駄のないやり方だ。こんな
ドイツ的なエコノミックマサカーを見せていただけて心底満足しました。是非ハンガリーという国でこんな映画が作られることを期待したい。極悪だったのはナチだけではない。それは皆もう知っている。


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