ソハの地下水道

シンドラーのリストに似ているが・・

いい話度 50
地味度 100
残酷度 60
総合得点 65


2011年ポーランド映画。
ワルシャワで下水道の保守管理が仕事のソハという男が、迫害されるユダヤ人を自分の庭である下水に隠す。しかしそれは善意ではなく、ユダ公から絞れるだけ絞って当局に引き渡してやろう、
二度おいしいゼ?ゲヘヘ…という具合にいいあんばいにゲスな男のお話だ。

最初は欲からだったが、だんだんユダヤ人たちに情がうつってゆき、ソハは命を賭けてでも彼らを救おうと奔走する…こう書くとやはり既視感のあるお話で、新鮮味があるとは言い難い。「シンドラーのリスト」にそっくりだが、あの映画のような華やかさは一切ないのが泣ける。

ポーランド映画はだいたいダラダラしているが、本作もその例にもれない。

ホロコースト映画としてみた場合の本作の見所だが、ウクライナ兵がソハの友人として登場するのだが、彼の着ている軍服。ウクライナ補助警察のものと思われるが、その軍服はかなり珍しいもので、ワタシも指揮官用軍服を映画で観たのははじめてかもしれん。。そのウクライナ兵はドイツが来たことでボリシェビキから解放され、ナチスを「救世主だ」と評する。こういった普段陽の当たらない
ウクライナ人の心情を描いたのはポーランド映画ならではと言えるだろう。ポーランドとウクライナはお隣同士で、開戦してすぐ東ポーランドは西ウクライナとしてソビエトに併合されてしまうのであるが、ウクライナが憎っくきボリシェビキに対抗するにはナチスに尻尾をふって自治権を掴み取るしかなかったという事情がある。ナチはそんなウクライナの足元を見て、これでもかとこき使うわけである。決して対等には扱わず、汚れた嫌な仕事をウクライナ兵にやらせる。嫌だけど逆らうわけにもいかん。。そんなウクライナ側のしょっぱい事情もこの映画ではほんのり描かれている。そこが少しおもしろい。

また冒頭、ユダヤ人の婦女子が素っ裸にされて森の中を走らされ、《保安警察》か《SD》と思われる親衛隊員に虐殺されるシーンなど、残虐描写はなかなかえげつない。ユダヤ人のひげをむしり取って侮辱したり、やりたい放題の暴虐シーンが描かれているが、尺にすればほんのわずかで、もう少しナチ側のえげつなさを長い時間描いて欲しかったというのが本音。



地下水道というが、はっきりいえば真っ暗な地下のドブで、そんな糞まみれの中を何年間も潜伏するユダヤ人たちのその生命力には圧倒される。銃殺された方がマシなんじゃないかと思えるほど過酷で、とても考えられない世界だ。あろうことか、そんな中で妊娠出産までしてしまうのだから感心するしかない。

ソハはシンドラー同様、ユダヤ人たちを助けるが、その評価は英雄とされたシンドラーとは正反対だった。ユダヤ人を救うことは、当時の社会ではありえないことであり、
罰当たりなことであり、モラルのハザードでもあったのだ。周囲の理解は戦中戦後にかかわらず得られなかったという。

ポーランドでは大戦の後も全土でポグロム(民衆によるユダヤ人虐殺)が頻発し、ホロコーストを生き延びたユダヤ人たちが何千人も殺されたという。生き残ったユダヤ人が欧州から離れようと決意した理由の一つにもなった。
結果的に欧州はヒトラーが望んだ"ユーデンフライ"(ユダヤ人のいない世界)を達成したのである。ひどい話だ。

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