Stalingrad(2013)

ひどさが伝わらない

苦痛度

40

厭戦

60

タフなアクション度

90

総合得点

65


 

2013年のロシア映画。

これは日本未公開未配給の映画で、観るには海外盤のDVDやブルーレイディスクを個人輸入する必要がある。というわけでなかなか観れない映画である。

なぜこの映画が国内に配給されないのかは知らないが、これはロシア映画としてはかなり金がかかっているようで、戦闘シーンや爆発シーンなどCGではあるがかなり高クオリティ。最新のデジタル技術で美しく再現されたスターリングラード戦は観る価値があると思う。しかし、、、

 

スターリングラード戦の映画化ともなれば、すでに多数映画が作られており、これらと比べられるのは仕方がない。特にヨーゼフ・フィルスマイヤーの「スターリングラード」とジュード・ロウの「スターリングラード」が有名だろう。どっちもかなり良い映画だと思う。マニアックさでは前者が、知名度では後者が圧倒的だ。これらと比較される宿命のある本作だが、実はロシア製のスターリングラード映画といえば、超だるねむ映画「スターリングラード大攻防戦」や「バトルフォースターリングラード」などしかなく、今回はかなり気合を入れて制作されたのは明らかだ。

ストーリーは多分第六十二軍所属の偵察小隊のお話だったと思う。当然ソビエト側の視点である。しかしドイツ軍側にはザ・ミスタードイツ軍トーマス・クレッチマン閣下がドイツ側のアイコンとして登場。実に20年ぶりのスターリングラード戦復帰を果たしている(笑)。陸軍大尉だが、指揮官としての仕事は謎で、主にアクションを担当している(笑)。

この映画まあ見所は豊富だが、気になるところも多く、素直に賞賛できない映画である。欠点は二つで、軍事描写のディテールのリアリティ不足と、中盤〜終盤にかけてのウェットなダラダラ人間ドラマだ。最初の方は比較的戦闘シーンも豊富で退屈しないが、中盤以降はかなりダラダラしており、全部見通すのはかなりきつい。

軍事描写に関しては当然かもしれないが見所がソ連兵の活躍に集中しており、ドイツ軍かっこええ〜を観たい人には完全にむかない映画。タフなソビエト兵が華麗なナイフさばきや跳び蹴り等でヘタヨワなドイツ兵をしばきたおすという映像は多数収録されており、これが日本で需要がないのには深く納得せざるを得ない。こりゃ売れんわ。。ロシア人向けな作りだ。これは一概に欠点でもないと思うが、おれとしてはそんなに楽しめなかった。圧倒的有利な状況でもドイツ兵の行動が基本的に間抜けだし、格闘戦やらせりゃすごく弱いし、銃を撃たせりゃ弾は当たらないし、一昔前のハリウッド映画的な弱いドイツ軍を観ることができます。

例えば序盤、攻めるソ連軍がドイツ軍の罠にはまり大爆発に巻き込まれるというシ−ンがあるが、ソ連兵はそんな大爆発の中でも炎に包まれながら果敢に突撃を続ける。対して土嚢や塹壕にこもり機関銃を配置した圧倒的有利な状況のドイツ軍だが、なんとそれら炎の突撃の前に無残にも撤退。ソ連兵は重火器もなしで死に体の状況でドイツ軍の機関銃陣地を押し破ってしまうのだ。ポカーンとするしかありません。

これはジュード・ロウの「スターリングラード」冒頭で、ソ連兵の突撃がドイツ軍の機関銃陣地の前にあっという間に頓挫し、撤退した兵士たちをNKVDの督戦隊が「祖国の名において命ずる 撤退は禁止する 撃てー!臆病者は撃ち殺せー!」とマキシム重機関銃など使用し、皆殺しにしてしまう。後に残ったのは押し黙った死体の山。どっちがリアリティあるのと言われたら文句なしに後者であろう。

まあ本作はこんな調子で、基本的にドイツ軍は馬鹿かつ弱い。意味もなく塹壕から出てきて殴り合いを始めたりする有様。何をしたいのか全然わからない。で、殴り合いになるとロシア兵には絶対勝てないのだ。

ドイツ兵はちょ〜弱い

こういう近接における白兵戦を好む姿勢は最近のロシア映画に特に顕著だが、この映画でそれをやるべきではなかったのでは?主役側の数名のソ連兵はごく控えめに言ってターミネーターなみに強く、セガール並みのアクションをガンガン繰り出してくれるのだが、この映画をわざわざ観るような日本人にそういう表現を喜ぶ人がいるとは思えない。特にずっこけたのは、ターミネータクラスの戦闘力を持つロシア兵がやっと捕えられてドイツ軍大佐のところに連れてこられる。なんで連れてこられたのかは謎だ。しかも大佐が直接尋問とかしようと近づくと近場のドイツ兵からナイフをパクって腹部を刺し放題。大佐あっさり戦死(笑)。言葉もない(笑)。

もちろん、ドイツ側にはトーマス・クレッチマンがいて、彼もかなり強い。見せ場が豊富で、これをもってドイツとロシアが公平に描かれている!という人もいるかもしれない。でも大尉という階級の人が白兵戦が強くても自慢にならないのではないでしょうか。。というわけでこの映画の軍事的なリアリテイは大したことないと言わざるを得ません。ウラヌス作戦前なんだから、ソ連兵はもっとどん詰まりで追い詰められてて泣き言ばっかりいってNKVDに撃ち殺されるシーンとか是非入れてほしかったのだが、全くなし。そもそもこの映画にはNKVDが出てこない。物事のA面しか見ていない感じの底の浅さを感じざるを得ない。また、わずかな偵察小隊に一個連隊ぐらいありそうな重火器込みのドイツ軍がまったく太刀打ちできないのも(そうみえるわけよ)おかしいというしかない。

あと3D映画だししょうがないのかもしれないが、粉塵と瓦礫に包まれたスターリングラード市街の表現も、いやにこぎれいで美しく、CGを多用しすぎで画質が良すぎるのも問題。もっとざらついた質感や薄暗さを出してほしいし、最近はやりの手ぶれカメラも入れてほしかった。スターリングラード戦の陰惨で暗鬱な空気がまったく表現できてない。むやみに戦闘シーンでスローモーションを多用する姿勢もちょっと古いと思う。文句を言い出したらキリがないが、基本的に文句は2つ。ダラダラしてんのと、ドイツ兵が弱すぎることだ。

輸入するのに一か月半ぐらいかかったわりにあまりグッと来なかった。個人的には今年度ナンバーワンの残念な映画だ。興味がある方は観てください。

 

 

 

 

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