誰がため

フランスヤクザ映画みたいな味わい

孤独な魂度

100

こだわりシャルブルク度

100

銃撃戦度

90

総合得点

85









なんかやけに気に入っちゃった2009年デンマーク映画。

骨太な
ノワール映画で、かなり個性的でもある。個人的にはこういうのはかなり好きである。

フランスヤクザ映画のようなダークで灰色で乾いた雰囲気の作品で、終始、
もうあとがない!とむやみに必死な様子の深刻な顔したおっさんが脂汗ダラダラ流しながらゴクンゴクンと生唾を飲んでばかりいる。そんな映画だ。

そもそもナチ体制下のレジスタンスものといえば、どうにもパッとしない感じのおっさんたちがあーでもないこーでもないと秘密基地ごっこを延々やっててそのうち密告者がいるとかなんとか仲間割れをし出すのがお決まりだった。そんな何とも言えないスケールの小ささが
鼻白むと言いましょうか、つまるところおれを強烈な眠気へといざなうのだがこれは違うんだよ!

レジスタンスとはいうものの、はっきりとキャラが立ってるのだね。つまり殺し屋の2人組だ。原題にもなってる、
フラメンとシトロンである。フラメンは赤毛の23歳の冷酷無比かつ無鉄砲で粗暴な殺し屋。シトロンは妻子持ちかつ繊細で小心な常識人だ。この二人がナチの協力者のデンマーク人、つまり"売国奴"を処刑していく。無駄に脇役を活躍させずにガンガンこの二人のアクチブかつ仕事人な生活を活写しているので、思いのほか退屈せず見れる。

上に殺せと言われれば迷わず殺す、すぐ殺す、そうやっておれらは生きてきた。だが、ある女に出会ってフラメンは骨抜きにされちゃうのだな(シトロン談)。一体何のために殺してるんだ…
ほんとに国のためになってんのかよこれ?と迷い始めるのである。

アームズ(兵器)が知能を持った瞬間である。こういった展開に一度陥ればハッピーエンドにはまずならない。フラメンにシンクロしてシトロンも嫁とガキに逃げられる。家族を守るために売国奴を探し出してはぶっ殺していたはずだった。しかしいつしか家族は家庭を顧みず殺し屋稼業を続けるシトロンに恐怖を感じて他の男のところにトンズラするんだよ。女は勝手だぜ!
でもいないと寂しいんだよな。シトロンもやる気がなくなっちまう。

フラメンをたらしこんだ女は、実はゲシュタポのスパイで、ゲシュタポのヘッドの親父ホフマンの女だ。(このホフマンは往年の名優クリスチャン・ベルケルがやっている。)おかげでフラメンの動きは筒抜け。しかもフラメンに偽情報?をガンガン繰り出し、さらに骨抜きにしてしまう。しかも上も上で信用できねえ!
何が本当で誰が真実を言っているのか、もはやわけわからん。フラメンやシトロンもわけわからなかったかもしれないが、おれも全然わからなかった。わかるはずもない。じゃあ信念も覚悟もなくして殺人などうまくやれるはずがないじゃないか。そうだろ?やれるとしたらサイコキラーである。フラメンもシトロンもサイコキラーではなかったのである。結末に関してはこれだけ言っておけばいいだろう。

まあ、殺し屋が頭脳を働かせたばかりに殺しの手管が鈍って遅れをとるという流れは実に古典的で、マフィア映画とかでもよくみられる展開である。(まさに"レオン"とかがイメージしやすいんじゃないか) 最近ではスピルバーグの「ミュンヘン」などでもたしかこういうのがあったろう。もう忘れたけど。

この映画は確かに難解で、人様のレビューもだいぶ参考にさせていただいた。その中にはおれごときが今更レビューをあげる必要も感じられないほど、優れた名もなき人々のレビューがあった。よってここでしか誰もやらないだろうということをやって気持ち良くなって(おれだけが)
さっさとトンズラしたいと思います。

欧州のナチ映画を観てれば必ず出てくるのが
対独協力者部隊である(本当かよ!)。この映画でもデンマークナチが登場する。黒い一般親衛隊の制服にノルトラント師団みたいな襟章。こんな恐ろしげなナリの屈強な男たちがドーンと難しい顔して駐車係みたいなことをしておる。こ‥こいつらはいったい何者‥。何とも存在感があるこの黒づくめの集団だが、この映画はその存在に関してあっさりしており、そいつらをこう説明する。
「シャルブルクの部隊だ…ドイツの軍服を着た売国奴…東部の前線で訓練を受けた奴ら…」
これだけである(泣)。
これだけでこの人たちを「あー、アレね」と理解できる人まずいないだろう。これではあんまりだ。だからここでできる限り推測していきたい(笑)。








まずシャルブルクとは
クリスティアン・フォン・シャルブルクSS少佐のことだろう。元々デンマークの極右政党の青年団にいた人だが武装SS黎明期にヴィーキング師団に参加し、叩き上げたお人である。彼が率いたデンマーク義勇軍はデミャンスクなど東部戦線で戦っていたのも確かだ。かなりの激戦だったようでシャルブルクは42年の6月に戦死し、身柄はデンマークに送られて英雄化されたようである。

シャルブルクSS少佐

さて‥こう書くとパッと出の悪役にしてはやけに存在感のある
"シャルブルクの部隊"だが、適当に見えた解説は割と的を得ていているように思える。なんだ。東部戦線で戦った選り抜きの部隊だったのか‥これなら迫力があるのも頷ける‥しかし≪武装親衛隊≫ならばなぜ≪一般親衛隊≫の制服を着ているのだろう?おれは首をかしげた。ありそうでこういうことは中々ないものなのである。そこで調べてみた。すると真相は違った!もっと複雑だったんだ!

この映画のシャルブルク部隊と、シャルブルクが指揮していた≪武装親衛隊≫のデンマーク義勇連隊とは別物なんだね。1943年以降、だんだんヤケクソになってきたナチス政権がデンマークに置いたデンマーク人とドイツ人混成の治安部隊があって、それが東部戦線で死闘を繰り広げた"英雄"シャルブルクにちなんでシャルブルク隊と名付けられただけみたいです。何とも複雑でややこしい話です。

劇中ははっきり明言されていないが、1944年の秋頃と推測される。(なぜかは自分で調べてくれ)そしてどうもこのシャルブルク隊はこの頃
"訓練大隊シャルブルク"と呼ばれていたようなのである。"訓練大隊"。まだ正式なSSメンバーと認められてない感じがするぞ…デンマーク人主体なら無理もない。だからこいつらが劇中駐車係をやっているのもむべなるかな。訓練生なんだよ。だから駐車係なんてしょぼい仕事を必死なツラしてやってるんだ!これでスッキリしたぜ!

この
"訓練大隊シャルブルク"は後に"警戒大隊ジーラント"ともう少し強そうな名前に改名されるのだが、その頃には第三帝国もめでたくこの世から消え失せるのであった…。

むやみに黒服着せとけばSSっぽいやろ?と黒服を大安売りする映画が氾濫するこんな世の中だから、おれも最初はこの映画も適当な考証でやってんじゃねえか?と疑いもした。だがこのシャルブルク隊はこの映画の通り、こんな軍服を着ているのだ!ほら。



襟の徽章と帽子の上のアドラーにすごく特徴がある。


シャルブルク隊の徽章。《ノルトラント》そっくりだね。



すげえ。。マジだ・・。

適当に見えたシャルブルク隊。
この映画が歴史考証も完璧なのは軍服や徽章を観ただけですぐ知れる。適当にやっても誰も文句言わないようなところでここまで完璧にやるとは…。ここは是非高く評価するべきではないだろうか?

いかがでしょう。シャルブルク隊にここまでつっこんだレビューは日本にはないと思う!(笑)


なんて複雑な組織なんでしょう、SSって。では爽やかな汗をぬぐいながら筆をおきたいと思う。
いや〜SSって本当にいいものですね(満面の笑顔で)!




 

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