>>戦争映画中央評議会

広告

血と砂

靖国神社に行くのはやめなさい 悪い神様にいじめられるから

 

爆発多い度

100

慰安婦

100

反戦

90

総合得点

90





「独立愚連隊」シリーズの最終作?になるのだろうか。1965年のモノクロ映画。

1945年の夏の中国大陸のどこかが舞台だ。戦闘訓練も受けてない軍楽隊13名が最前線の部隊へと送られる。時を同じくして師団司令部人事課の小杉曹長(三船敏郎)も最前線へと転属命令を受けていた。実戦経験豊富な曹長は、このボーイスカウトのごときあどけない軍楽隊を連れて大陸を旅する。

佐久間大尉率いる大隊へと着任した曹長はやがて”ヤキバ”と呼ばれる砦の攻略を命ぜられる。部下として与えられたのは、上官殴打罪でしょっぴかれた元板前と、非暴力主義の通信兵、5年も墓堀りばかりしてて出世に縁がない葬儀屋。そしてボーイスカウトの13人の坊やたちだ。あとあとで慰安婦も一人くる。まともに戦えそうなヤツは一人もおらず、死にに行くようなもの。

砦は八路軍の支配下にあり、大隊にとって重要拠点らしい。もともと問題を起こして軍法会議送りになるはずだった小杉たちはこの攻略の露払いとして送り込まれたのである。かなり悲惨な状況だと思うのだが、映画を通じて空気は明るい。岡本喜八独特のユーモアやアナーキズムに満ちた描写、不釣り合いなほど明るく陽気な軍楽隊のハーモニー。淫靡かつ豪放磊落や慰安婦たち。

岡本喜八の戦争映画に慰安婦は必ずセットとなるが、今回の作品は慰安婦に対する最大限のリスペクトが捧げられていると思う。もっともその描写は現代のおれたちが観ると、「おいおい、いいのかよこれで」と思うような感じなのだが、おれも実際の慰安婦たちはこんなモンだったんじゃないかと思っている。戦地で身を擦切らせながら働くのもお国のため。彼女たちも命がけで戦っていた、ということだろう。それは三船敏郎演じる小杉曹長が自らの金鵄勲章を「これはおまえにこそふさわしい、本当にありがとう」と自分のイロ(情婦)に率直に述べることからも明らかだ。このイロは日本語カタコトではっきり書かれちゃいないが現地徴集の中国人慰安婦ということになるだろう。お春さんと呼ばれるこの女性はその生命力あふれる健康美と色気でもって、文字通り小杉隊の花となり、童貞小僧たちの筆おろしを担当してくださる。「お春さんを抱く前に敬礼しろ!」死ぬとわかっている戦いの前夜、小杉曹長が童貞こぞうたちにこう訓示する。その描写は可笑しさと哀しみが同居する名シーンである。


慰安婦のお春さん 団令子

戦闘シーンはかなり激しく、爆発シーンや銃撃戦のシーンも豊富だ。九九式軽機関銃や擲弾筒で戦場を制圧し、白兵戦に持ち込むという日本軍の伝統的な戦い方が確認でき、軍事描写も萌えポイントが多いはず。戦争映画ファンは楽しめるだろう。(もちろん素人集団の彼らはそのやり方がへたくそなのだが)

はじめは素人だったボーイスカウトたちも、戦闘を経験し、仲間を殺され、慰安婦を抱き、男の顔へと変貌を遂げていくのだ。校長先生のごとき曹長と、担任の先生のごとき慰安婦のお春さん。二人は少年たちを優しくあたたかく見守る。少年たちもはじめて抱いた女を守ろうと命をかける。この映画は彼らの成長譚でもあるが、ラストはそれが一切報われぬ悲惨なもの。一度はヤキバを奪ったものの、圧倒的物量の八路軍の逆襲に部隊は玉砕。お春さんだけが彼らに守られ生き残ったのであった。そしてその日、日本は終戦を迎える。

明るくユーモアにあふれる映画で観ている時はかなり笑ったけれども、ラストに向かうにつれ悲壮で痛々しく胸が苦しくなる映画である。独立愚連隊シリーズの中では最も反戦色が強く、悲惨な物語ではないだろうか?また詳しくは書かないが、小杉がヤキバへ送られることになった経緯の部分はよくみていてほしい。そして板前との人間関係も。三船のいかにも愚直で男らしい不器用な演技がシンクロし、また涙を誘う。

かなり良くできた物語だと思うのでおススメしたい。戦闘シーンも激しくここだけみてたら反戦映画にはとてもみえない(笑)けど、映画としてはかなりの見せ場だと思う。50年前のこの映画の方が現代日本映画よりもはるかにあの戦争のことを客観的にとらえているようにみえるのは気のせいだろうか?未見の方は一度観てみることをお勧めしたい。





 

 

 

戻る