ヒトラーの追跡

ヌルい

地味度

100

邦題デタラメ度

100

恋愛度

90

総合得点

60


ナチスの少数民族の迫害はユダヤ人だけにあらず!なんとジプシー・ロマもその中に含まれていたのだ〜という映画(?)。それがどうしたと言いたい気分だが、ユダヤの迫害は大宣伝されているのに、ジプシー?何それ?食えるの?という人も多いのではあるまいか。ヨーロッパにおいてはジプシー=ロマ、少数民族の歴史は大変長いものらしい。彼らは特定の住居をかまえず、流れ歩く流浪の民で、時の権力者に迫害を受けることも多かったようである。



さて、そんなジプシーの美女が主人公のこの映画、ゲシュタポがガンガン追ってくるスリリングな映画になればかなり面白くなりそうだったが、ドイツ産の作品であり、あまり自国の犯罪をフィーチャーしたくなかったのか、何とも中途半端かつ消化不良な作品となっている。

つうかジプシーの人がこれを観てどう感じるのかかなり疑問である。ジプシーの迫害を露骨に描くシーンは皆無で、主役の美女の腕に刻まれた入れ墨が、ジプシー収容所から逃げてきた悲惨な経験をにおわすのみである。テレビシリーズだからあまり残酷にやれなかったのかもしれないが、これは不満が残る。国防軍(ヴェアマハト)のプレイボーイな青年との恋愛に終始しており、禁じられた愛!二人の明日なき逃避行!といったあんばいであり、これには拍子抜けさせられる。まあ良くも悪くも大人向けなドラマ仕立てで、戦争や迫害のために認められない二人の愛!どうしよう!悲しい!という調子である。ドイツがドイツ人にもいい人はいたんだとパフォーマンスをやりたくなる気持ちはわかる。ジプシーに対する差別意識を持たずに純粋に女性として愛するというのはやりたくなるのもわかるし別にケチをつけようってつもりはないがね・・。

末端の国民は戦争が終わってもジプシーに対する差別意識を改めず、「最近は胡散臭い連中(ジプシー)が増えたわ〜」などと特に反省した様子もない。その罰として息子の死を教えてもらえない母親の姿は痛烈な皮肉にもなっている。

でもやっぱりな。娯楽作品として恋愛を絡めるのならば、もうちょっとエンターティメントを意識して悪いゲシュタポが追ってくるとかそういうのをやってほしかった・・。これはただのおれの願望だが、女性はアウシュビッツのジプシー収容所から逃げてきたって設定なんだから、保安部(SD)やゲシュタポが追ってくるシーンとかちょっとぐらい入れてもよかったのではないか?全くないというのは・・邦題も完全にデタラメってことになるしな。

逃げてる途中、偶然遭遇するハウプトシュトゥルムフューラー(SS大尉)に尋問されるところはかなりの緊張感で良かったと思う。だからこそ余計にそう思ってしまう。道々で助けてくれるいい人だらけという描写はあまりにも自国の非道に対して甘いと言わざるを得ないのではないだろうか。ジプシーはユダヤ人同様、銃殺され、ガス殺され、戦時医学の人体実験に供され、数万人の無辜が苦しみと絶望と悲しみの中命を絶たれたのである。この程度のヌルい迫害描写には違和感が残ると言わざるを得ない。


強制収容所で虐殺されたとみられるジプシーの囚人の亡骸

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