海と毒薬

戦時医学の狂気

陰鬱度 100
ヤケクソ度 100
狂ってる度 100
総合得点 90

86年製作の日本映画。遠藤周作の同名の原作を映画化したもの。

大東亜戦争末期の1945年、九州帝国大学医学部で実際に行われた米兵捕虜の生体実験を題材にした映画。
まずキャストがかなり豪華で若き日の渡辺謙、奥田瑛二、岸田今日子などが医者看護婦役で登場。

演出は非常に淡々としており、
陰鬱なピアノの旋律が随所に挟まれる程度。まーこれはかなり効果的で不気味な雰囲気をものすごいものにしている。

モノクロ映画なので
手術シーンはけっこうリアルに見える。カラーだとちゃちくみえたかもしれない。そして手術シーンはかなり長い。そして緊迫感がある。大したことはないが少々グロイシーンもある。今はバイオハザードでも18歳推奨らしいからこれもそれぐらいか。患者を死なせた時に、ヒグラシの鳴く音を挿入するあたり効果的だと思った。虚しさが倍増する感じがする。

戦争末期、空襲でバタバタ人が死んでいき、人の死がインフレを起こしていた時代、医学の発展のためになる、空襲で死ぬよりはちぃっとはマシだろう、と助からない患者を実験オペで殺そうとする帝大の医者たち。

権力闘争のために人の生き死にを手の平で転がす傲慢さ。狂ってるとしか言いようがない。そしてそのような流れに逆らえず淡々と付き合っていくしかない末端の医者たちや看護婦たち。

権力闘争のために軍と手を結び、B29の搭乗員を生きたまま解剖することになっても、もう日本はどうせ負ける、もうどうでもいいんだ・・と淡々と無感動に作業を行う姿は圧巻である。それを先ほどの陰鬱な音楽がこれまた地味に淡々と映画全体を彩っていく・・。

紛れもない殺人であるはずなのに、おれの心は全く動じない、おれの心はどうなってしまったか・・と無感動に回顧するある医者。

戦時という特殊な空間では狂っていたと気づくのは戦争が終わってからなのだろうか?
渡辺謙が演じるある医者は、「戦争中にこんな病院にいたから捕虜を解剖したのさ。我々を糾弾する連中も同じ立場になったらどうするかわからんぜ」と語った。

あまりうまく言い表せないが、こんなに狂ってるなぁと思った映画は観たことがなかった。

米兵は、どれだけ肺を切除すれば人は死ぬのかという実験材料にされたのである。市民を無差別に焼き殺し、都市を灰にした悪鬼だ。当然の報いだと思ってしまうのも狂っているのであろうか。

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