>>戦争映画中央評議会

わが教え子、ヒトラー

ウルリッヒ・ミューエの遺作です

ブラック度

50

ネタ度

70

笑える度

50

総合得点

30


2007年ドイツ映画。

ハナっからネタだと思って楽しむのが正解だと思う。

話は全部架空だし、ディテールもいい加減だ。ヒトラーもまったく似ていない。

 

 話は、戦争末期で弱り切ったヒトラーに自信を取り戻させて、かつてのごとく在りし日のような演説を大衆にぶちまけてほしい!で、戦争はここから逆転するんだ!という重臣たちの意味不明な策謀によりザクセンハウゼン強制収容所よりユダヤ人の俳優が招かれる。ドクター・グリュンバウムだ。

ドクターはヒトラーにマンツーマンで演技指導をし、心を通わせ、ヒトラーの心の奥底の傷までつまびらかにし、その葛藤を乗り越えるための手助けさえする。つまりカウンセリングにおける治療同盟のようなものが、ヒトラーとユダヤ人の間に結ばれるのだ。ま、到底ありえそうにない話である。

だいたいヒトラーがバッチリな演説をかませたからといって、それでどうなるってんだ。時は1945年の1月1日である。東ではブダペスト包囲戦が、西では「ラインの守り」作戦が発動中である。映画ではこのことに対する言及は一切なし(笑)。ンなアホな。ヒトラーが元気出すとかなんとか言ってるような趨勢かよ。

 もうこの映画はそういう文句をつけることさえハナからナンセンスなんだと思う。コメディとしてフィクションとして雰囲気を楽しんでちょうだいということなのだろう。

見所は名優たちの手堅い演技だ。イングロでゲッベルスをやっていた人がここでもゲッベルスを演じている。「ヒトラー最期の12日間」でヒムラーをやっていた人がここでもヒムラーをやっている。といってもヒムラー役の人はまったくの道化で、「12日間」でみられたリアリティのあるヒムラーではないのだが、、

 その他、シュペーアやラッテンフーバーなど側近や重臣がたくさん現れるが全部アホの道化扱いである。

ナチの重臣をアホとして扱う映画は数多く、特別目新しいことではない。とてつもない犯罪を犯したイカれ国家だが、どこか滑稽な第三帝国。そう演出されるのも仕方がないかもしれない。

しかしこの映画はやりすぎだ。強制収容所の官吏たちは醜いデブばかりキャストに選んでいるし、シュペーアですらちょっと頭悪い風に描いている。シュペーアは連合軍の検査によればIQ128である。(東大生の平均が120。120で100人に1人の秀才とされる)

いつもいつもアホのデブとして描かれるゲーリングは138だし、その他の重臣も120〜140の怪物級の秀才ばかりである。ヒトラーからしてIQ150という推定があるし、この映画で一番アホとして描かれるゲッベルスなんてIQ180という数字もある。ナチ党はドイツの天才が集結した犯罪集団だったのだ。だからこそタチが悪く手に負えなかったのである。

こう考えていると、この映画、イマイチのれませんなあ。ヒトラーが父親に虐待されていて、その負のパワーでユダヤ人やらマイノリティーを攻撃したという理屈に終始しているが、ホロコースト学を少しでもかじればまったく陳腐で底の浅い意見だとわかるだろう。

ラウル・ヒルバーグの「ヨーロッパ・ユダヤ人の絶滅」をオススメしたい。

 

正直最初から荒唐無稽なデタラメ映画だと思って、その雰囲気に入り込める人だけがそこそこ楽しめるだろう。個人的にはいったいどんな階層の人々がこの映画を楽しんでいるのだろうか?と疑問である。おれとしてはヒトラーやナチをギャグにしたりおちょくったりSF化するのは好きではなく、そんなことしなくても十分に恐ろしく滑稽で人間の闇を知ることができる素材だと思う。下手にギャグ化SF化するのは陳腐化につながるだけではないだろうか?(なにしろこの映画でヒトラーはトラウマ抱えているだけの神経症患者のごとく扱われているので、心を開いたユダヤ人のグリュンバウム教授には超優しくていい人。ンなアホな話があるか。そんなにヒトラーは甘くねえよ)

まあそれでもギャグがおもしろければいいのだが、クスリとも笑えなかった。なんかユダヤ人のガス抜きのような映画だな、、、こんなんでええんか。ヒトラーの心の闇に迫ったフィクションとしては「モレク神」がすでにあり、正直足元にも及んでいないと感じた。

まあこれも一般的には名作とされているので、興味がある人は試してみてください。

 

 

 

 

 

 

 

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