>>戦争映画中央評議会

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ヒトラーの忘れもの

歴史に埋れたドイツ敗残兵悲話

 

緊迫度

100

惨い度

100

爆発度

100

総合得点

90




2016年のドイツ・デンマーク映画。
1945年、ドイツ敗戦後、20万の兵士がイギリス軍の下で武装解除されたが、彼らの多くは国民突撃隊で、少年兵士がかなりの割合で含まれていたらしい。

デンマークの西海岸に埋設された220万個にも及ぶとされる地雷の除去作業に、「ドイツ兵使えばいいんじゃね?」とイギリスが提案したのを受けて、デンマーク政府は彼ら少年兵士たちに何の準備も道具も与えず、素手で地雷撤去作業をやらせた。これは捕虜の虐待を禁じたジュネーブ条約の明確な違反であるが、戦勝国が罪に問われることはなかった。デンマーク国内でもつい最近まで埋れた歴史で、国民が関心を持つようになったのは21世紀も近付いたころであった。




物語は、デンマーク軍の軍曹が捕虜を虐待するシーンから始まる。彼はイギリス風の軍装を着用していて、どうやらイギリス軍のデンマーク部隊のような位置づけであったのかもしれない。激しくナチとドイツ兵を憎んでいて、ドイツ兵が飢えようが死のうが知らん、という調子で極めて冷酷かつ粗暴である。

ところで、デンマークは、ナチ占領国の中では「何もかもが例外だった」といっていいほどヌルい統治であったことで知られている。デンマークの国民政府は解体されることもなかったし、デンマーク国王も普通にそのまま王座に座っていたし、民主的な選挙が続けられ、時々平和に政権が交代していた。ユダヤ人の大虐殺もほとんど行われず、99%のデンマーク・ユダヤ人が大戦を生き延びた。

デンマークはドイツ軍の侵攻に対して5時間ぐらいしか抵抗しなかった。すぐに敗北を受け入れ、上記の如き例外といえるほどに平和な統治が続けられた。デンマークはソビエト連邦と国境を接していなかったし、デンマーク人はヒトラーの見る限りでは人種の敵でもなかった。デンマークに住まうユダヤ人も、国家と法による統治が続く限りにおいては安全に隠れていられた。1943年になると、ポーランドで絶滅収容所の監督を行っていたゲシュタポ将校がコペンハーゲンに警察長官として着任するのだが、彼はポーランドで行ったような仕事は、デンマークでは不可能だとすぐに確信した。デンマーク政府も主権国家としての地位を維持していたから、ユダヤ人の迫害が主権を損なうと知っていた。

それでもベルリンの最優先事項はユダヤ人の絶滅であったから、時に連行が行われたが、ほとんどはサボタージュに阻まれて頓挫した。数少ない例外で移送された者たちはいたが、デンマーク・ユダヤ人は特別待遇で、プラハ近郊のテレジエーンシュタットに移送され、プロパガンダ用の好待遇を施され、誰一人としてガス殺されなかった。彼らは収容所でもデンマーク国民としての市民権を保持していたからであった。

なぜ、ナチのデンマーク統治がこんなにもヌルかったのか?という話をすると一万文字ぐらい連ねればならぬので、とても長い話を一言でいえば、これは単に運とタイミングの問題だった。この映画はホロコースト映画ではないので、この辺りを詳しく語るのはやめておこう。

問題は、ここまでぬるかったにもかかわらず、なぜこのデンマーク人はそんなに怒ってるの?ということである。

考えられる理由としてまず、デンマークはナチの保護国であったから、ナチに毅然と対応しなければナチの仲間と見られてしまう、というものが一つ。つまり日和見的態度。
もう一つは歴史年表見てるだけではなかなか見えてこないが、草の根レベルでは市民はやはりドイツ兵に酷い目にあわされていた、ということが考えられるだろう。(ドイツ軍がデンマークで食糧徴発をしていた可能性は高い)ワタシはなんとなくこの二つは両方当てはまっている気がするが。

軍曹は西海岸の一部の地雷除去として、少年兵14名を受け持ち、彼らに冷酷非情な態度で接し、一人につき一時間に六個のペースで地雷の除去作業を無理やりやらせる。食べ物もほとんど与えず、暴力と恐怖で統制する。少年兵たちは次々病気になったり、作業中の事故によって爆死して行く、、、

しかし、軍曹も命令で動く軍人に過ぎなかった。冷酷そうに見えた彼も、上の命令に従っているだけ。食べ物を送ってこないのは上の意志であるし、少年兵を情け容赦なく扱い、爆死しようが何だろうが地雷除去をやらせるというのも全部上(イギリス軍とデンマーク政府)からの命令。上からの命令でごんす。逆らえんとです。

まあ、軍曹の心情としてはこんなにも地雷を埋めやがって!おれの祖国を!というものもあって、少年たちが憎たらしく思っているのもあるだろう。こう考えると、少年たちが残虐な地雷で死んでゆくサマも、元はといえば彼らの父親たちが埋めたものであり、少年たちはドイツにもデンマークにもイギリスにも虐待を受けてるというわけである。

文字通り英国将校がいきなりやってきて、ションベン飲ませるシーンがあるのだが、、、、悪いのは全部イギリスだ!という主張に違いない。その通りです(笑)。悪いのは全部イギリスだ(笑)!

ナチは嫌いだが、非道な任務にいつしか罪悪感を持つようになった軍曹は、少年兵たちをあたたかく遇するようになる。食べ物を与え、人間的に扱い、自由時間や休日まで与える。しかし・・・ストーリーはこの辺にしておきましょう。。

見所は、やはり少年兵たちの理不尽な境遇。ヒトラーやドイツ軍の犯した罪を一身に背負わされ、危険な任務を無理やりやらされる姿は気の毒で胸が痛む。無名俳優ばかり使っているので、非常に芝居がリアルかつ自然で、感情移入しまくってしまう。

地雷の除去場面も山と盛りつけられているが、同じ爆弾処理作業モノ「ハートロッカー」以上の緊迫感である。いきなり爆発。病気で体が弱って手元が狂って爆死したり……酷すぎ…
まるで強制収容所の囚人のようだ。ナチが作ったKZよりはだいぶマシかもしれないが、それでも彼らが罪を背負わされるのは理不尽ですよねえ、、、それこそユダヤ人の虐殺なども、デンマークでは大したこともなかったわけだし、、、←などと簡単に言っては行けないのだろうが

仲間や兄弟を喪った彼らが、精神的に追い詰められて行く姿や、仲間を想いあったり、何気ない日常に安息を見出したり、帰郷だけを希望に毎日を生きる純粋な姿などに胸をうたれます。じんわり泣けました。

地雷除去に従事した2600名の捕虜のうち、半数が死亡、或いは重傷を負い、彼らが除去した地雷は140万個に及んだそうです。でもデンマークにはまだ地雷がたくさん残されているんだとか、、、酷い史実だが、ここに着目して丁寧に作られた本作は、各国の映画賞を総なめにしました。オススメの一作。

 

 

 

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