>>戦争映画中央評議会

善き人

ヴィゴ・モーテンセンがSS大尉に扮する奇抜さがウリ

黒服度

100

作りこみ度

30

大人向け度

100

総合得点

65


2008年、イギリス・ドイツ映画。

ヴィゴ・モーテンセンが主演のドラマ映画。

1930年代のドイツを舞台に、大学講師のハルダーが過去に書いた安楽死に関する小説をヒトラーが読んでプロパガンダに利用する。ハルダーは親衛隊に勧誘され、どんどん出世を遂げてゆく。

 

ストーリーはこんな調子だが、ハルダーは普通の女たらしだが親想いの良い人。ユダヤ人の医師と友人で一緒にヒトラーの悪口を言っていたはずなのに、ナチのT4計画に自分の著作を利用されてしまい、ゲシュタポ本部へと招致される。そこでゲシュタポから安楽死を正当化するような論文を書くように要請されこれを快諾。親衛隊員として出世街道をひた走り、若い教え子と浮気して家庭を捨て、時代のうねりと共に徐々にホロコーストにも関与せざるを得なくなっていく。どこが善き人なんだか。普通に悪い奴だし、当時どこにでもいたナチの知識人将校のテンプレではないだろうか。

親衛隊の中で出世していくのとは裏腹に、ユダヤ人の親友とは徐々にぎくしゃくし始め、水晶の夜のシーンをはさんで彼は行方不明に。ハルダーは悩み葛藤し親友を救おうと探し回るが、偶然訪れた収容所はまさかのアウシュビッツ。そこで自分が日和見的に立ち回った挙句の結末を目にする。

この映画は作りこみが甘い。ハルダーがSS大尉に出世すると彼も親衛隊の黒い制服を着用するようになるのだが、この時代に黒い制服はほとんどメイン使用されることはなく、むしろ徴兵忌避の象徴としてちょっと馬鹿にされていたというのが史実だ。例え国内勤務のアルゲマイネ親衛隊員でも灰色の制服を着用していたというのが正解。わざとかもしれないが「ホロコースト アドルフ・ヒトラーの洗礼」のようなオシャレさがなく、センスを感じられず、ただ単に作りこみが甘いなと思ってしまった。

ホロコースト 〜アドルフ・ヒトラーの洗礼〜

また、収容所で所長クラスの少佐に対して大尉のハルダーが偉そうに喋っているのもおかしい。いくら国家保安本部にいるとはいえ、階級は相手の方が上なのだからあんな風になるはずがない。収容所内部でも囚人たちは血色が良いし体格が良すぎるためいまいちリアリティに欠けるのも難点。そしてすべての言語が英語で話されているため、やはり作りこみに難があるというしかない。ラスト、囚人たちがガス室に向かって走らされている(と思われる)シーンがあるが、これは断然全裸でやるべきだったはずである。絵的なインパクトも史実との整合性も申し分なかったはず。お上品すぎるのが難点。絶滅収容所をお上品に描いてどうするんだと問いたい。

残酷戦場写真館@

残虐描写や処刑シーンなどほとんどなく、お上品にまとまった大人向けの映画だと思うが、特別目を惹くところもなく、科学は権力に濫用され、しばしば曲解されて利用される、という大して目新しいとも言い難いテーマであるため、大変に退屈な映画である。ヴィゴ・モーテンセンのSS軍装姿を見たいというファンにのみアピールできる映画かもしれない。この映画を観るぐらいならもっと先に観たほうが良い映画はいくらでもあると言っておく。

 

 

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