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【やってらんねえよ】
ボロボロの負け戦を描いた
戦争映画10

【序文】
負け戦には美がある。ほんとかよっ!?いや、本当です(真顔)。
勝ちまくってる戦争映画なんてつまんないですよ。
ぼろくそにやられまくって仲間も死にまくって自分も死にかかって、
で、そこでいかにふるまうのか!?というのが問われているのではないでしょうか(妄想)?

今回は、
すごくがんばってるのに!
死力を尽くしているのに!
まったく努力が報われずにぼろくそにやられてしまう戦争映画を集めてみました。





10 坂の上の雲

NHKのスペシャルドラマとして近年放送されたため、比較的記憶に新しいかと思う。 古きは「203高地」というまんまな映画がありましたが、戦闘シーンが進化してるのはやはりこちら「坂の上の雲」でしょう。
明治日本の偉い人たちの日々の努力を紹介しつつ、その結実として日露の衝突を描き、勝ったぞバンザーイ!と終わるハッピーなドラマで、誰が観ても気持ちが良い。負けてないじゃん!?しかし後半旅順要塞攻囲戦、203高地攻略戦のあたりにさしかかると、こ、、これは、、と絶句するような呆れるほど無策な旧日本陸軍の姿が浮き彫りとなる。

コンクリートと土嚢と塹壕と鉄条網で何重にも防御された近代的要塞に鉄メットさえかぶらず学生服みたいな格好でドンドン突撃していく日本の兵隊さん。そんな丸裸同然の彼らに容赦無く降り注ぐ
榴弾砲の雨あられ、容赦ないマキシム機関銃による掃射。手塩にかけて育てた近代的軍隊は一瞬のうちに死体の山へとメタモルフォーゼ。言葉を失う。特にすごいのは榴弾砲の表現で、これは観てもらうしかないが、これよけるの無理(笑)!絶対無理(笑)。絶対死にます(笑)。なかなかこういうのはないので新たなリアリズムに満ちた表現としていいと思いました。また、榴弾砲と機関銃弾の雨の中、鉄条網をハサミで一本一本切ってる兵隊の姿など涙なしには見れない。

兵士たちの受難はとっても長くしつこく続き、こんなえらい目にあわされた挙句どうにかこうにか203高地を奪取し、
「旅順艦隊丸見えでありまぁすぅ」という結末には涙するしかありません。ま、と言いつつ、ガキがみると安直な極右思想にはまりそうなのでR-18推奨(笑)。




ローンサバイバー/Lone Survivor

米軍も割と無茶してんなあ、、というのがこの映画を観てると思わざるを得ないのだ。空軍の支援もない中、たった4人で敵軍の指導者の暗殺を試みるとは、、、日本軍の決死隊も真っ青の無謀さである。結果は散々で、生存者はただの一人。世界最強の軍事力を持つアメリカでも、ゲリラ戦ではしばしば負けを喫している。

こんな命令受ける方もいい迷惑じゃないか?命令を受けたからにはやらなきゃなんないしな。

この映画タリバンは完全な悪役なのだが、その戦闘力はかなりのもので、世界最強の特殊部隊と名高いシールズ隊員をして、
「なんであんなに速く動けるんだよ!?おれたちよりはええよ、、」と絶望の言葉をはかせている。主役級のキャラクターたちがガンガン被弾する緊張感は例えようもないものである。

結果的にご都合主義的な逆転劇はあるものの、作戦は完全な大失敗。大失敗だったかもしれないが、シールズ隊員たちの勇敢な誇り高い戦いぶりは今後も永遠に語り継がれるだろう。




ブラックホークダウン/Black Hawk Down

ソマリア紛争に介入した米軍がイタい目にあっちゃってすぐ逃げ出しちゃったのは、その後の歴史を考えればまずいものだったかもしれない。この紛争でアイディード将軍側についたゲリラにはアルカイダもいたらしく、米軍がほんの十数名の犠牲者を出しただけでそそくさとトンズラしたのには、米兵さんゲリラに弱いのね、、、ベトナム戦争のころから変わっていないのね、、、という印象を与えてしまったかもしれない。とはいえ、上は弱腰だったかもしれないが末端の兵士たちはひたすらまじめに高度な作戦を遂行していました。彼らは合衆国が誇るタスクフォースであり、世界で最も訓練された特殊部隊だったのだ。

だが、あまりに相手が悪かった!敵は現地民全部とそれらを盾にした姿の見えぬゲリラ部隊!アメリカが最も苦手とするアウェーな戦い、昔みたいに原爆ぶっこむわけにもいかず、不利な戦場を少数で戦わざるをえない。

いかにアメリカが傲慢なジャイアンに見えたとしても、末端兵士たちにはなんの罪もない。それどころかわけのわかんない国で慣れない気候で360度全部敵という状況で、政治家やお偉方の駒となって命を張らねばならない。大義さえも曖昧な中、いつしか彼らが抱くのは戦友のために戦うという高貴なイズム。これだけは違えるわけにはいかないのだ。

ガキがその辺チョロチョロしてたり、女子供も後ろから撃ってくる常識外のゲリラ戦。現地民が群れとなり巨大な殺意の塊と化して米軍特殊部隊に襲いかかる!彼らは生き延びることができるか?戦友を救うことができるのか?異常に臨場感溢れる映像であり全部観るとグッタリ疲れる。だが是非大画面で観て欲しい。




高地戦/The Front Line

朝鮮戦争を描いた韓国映画としてはおそらく至高の一本であり、これを抜くのは今後十年かなり難しいのでは、、と、思わせられる傑作反戦映画だ。まあ基本的には泥まみれグチャドロの戦場描写が延々続き、殺したり殺されたりしている。

韓国軍の描写も北朝鮮軍の描写もかなり平等で丁寧。これは同じ民族だからなのだろう。そんな風に丁寧に描写された魅力的な人々が無慈悲な戦場でタマ取り合ってる姿はひたすら無益で、観ているものにとっても精神的ダメージがデカい。戦闘シーンはそれなりに豊富で、内容もやりすぎ殺しすぎ殺されすぎという明らかに量が多すぎる脂っこいラーメンをドンブリいっぱい食わされた挙句、チャーシュー丼までついていた。残したら罰金という極悪ラーメン屋のような、そんな映画である。嘘つけっ!

でもこの映画は最後の最後までみたら泣かずにはいられない。もう勘弁してやってくれっ!そう思わずにいられない。戦争なんかやめてさっさとクニに帰ればいいじゃない。。あっそうか、クニで戦争してるんだっけこのシトたち。しかしため息とともにそう呻かずにはいられない最高級の反戦映画だ。




橋/Die Brucke

終戦直前1945年ともなれば、ドイツ第三帝国には適齢期の男子がいなくなってしまった。みんな死んだからだ。
簡単に言うけどこれはひどいことだよ。。。日本の学徒出陣よりもはるかに切羽詰まった最悪の状況がドイツにはあった。
そこで目をつけられたのは、少年や老人である。彼らは≪国民突撃隊≫や≪ドイツ国防軍≫へ訓練も適当に動員されていく。9歳の少年まで即席の対戦車兵器を持って、ソ連の大戦車団や連合軍の精鋭と対峙せねばならなかった。

この映画はそんな少年兵が、戦況もよくわからないまま大人の言うがまま前線に連れてこられて、連合軍の戦車部隊と正面から戦って散っていくサマを描いている。作戦目的は”橋”の防衛だったが、この橋はそもそも爆破される予定のもので、少年たちが命を張る理由は全くなかった。彼らの死に全く意味はなかった。だがその無意味な姿がどうしようもなく我々の心をつく。ワタシなどは上の少年の泣き顔を見てるだけで喉の奥が熱くなる。演技とは思えん。ドイツ戦争映画を語る上では最も基本の一作である。




ヒトラー最期の十二日間/Der Untergang

負け戦というテーマで行けば、最も普通に選ばれる作品だろう。
邦題はこんなんだけど、原題はまんま"滅亡"を意味する言葉であり、なにもヒトラーだけをテーマにした映画ではなく、極貧かつヤケクソな"支配人種"の最期の乱痴気騒ぎを映像化している。その妖気はなかなかのもので、劇場公開当時はそのあまりに惨めな姿に唖然とした覚えがある。

軍人民間人問わず赤軍の延々続く砲撃に巻き込まれ、総攻撃の開始を戦々恐々とし怯えるのみ。降伏したくたって《総統》が許してくんないしな。逃げようったって此の期に及んで完璧な仕事をする秘密警察機構に阻まれてどうしようもないしな。「もうだめやん。。」とちょっと呟いただけで「Feigling(臆病者)!!」と電柱みたいなのに吊るされちゃうしな。どうしようもないやん。。滅ぼされるのをただ待つだけというのは辛かっただろうと思います。

そんな中でも《Endsieg(最終的勝利)》を信じて狂信的に戦ったシトたちもいまして、それは純粋な少年兵だったり、ヒトラーの親衛隊だったり、祖国を裏切って第三帝国についた名もなき欧州各国の傭兵たちでした。お偉方は真っ先にホールドアップするかとっととトンズラぶっこいていたのです。嫌ですね。

そんなわけで、ベルリンの最期にはたくさんのドラマがあるかと思います。もっともそれは茫然自失として言葉を失う悲惨なドラマかもしれませんが。大ドイツの野望の末の大敗北を最も端的に表現した映画といえるでしょう。




ザ・パシフィック/The Pacific

ごめん。これは最終的にはアメリカの大勝利なんだから”負け戦”というテーマで行けば全然違うかもしれないけど、それでも選んでしまいたくなるほど絶望感と厭戦気分が強烈に高まる作品なんです。

パラオのペリリュー島における殲滅戦をこれ以上ないぐらいフィーチャーしたスピルバーグの戦争ドラマです。「プライベートライアン」などと比較しても全く遜色のない戦闘シーンの激しさで、ここにアメリカ兵として行っても生きて帰ってこれる気がしない。守る日本軍もサンゴ礁にこもってのゲリラ戦であり、圧倒的な艦砲射撃と空軍による猛爆撃を浴びながら、水源も乏しい中、しけた三八銃大事に握りしめてひたすら耐えていたのなかと思うと、守っていても生きて帰れる気がしない。

地獄のごとき戦場。
さらに、このドラマは沖縄戦や硫黄島戦も描かれており、観ていても楽しいところが何一つ見つけられない陰惨で冷酷な戦場描写が秀逸。常に末端の下っ端兵士の視点で描かれる血生臭い殲滅戦は、情け容赦ないもの。しかも自国の戦争犯罪をかなりフィーチャーしており、よくあるアメリカ式の愛国映画とは全くスタンスを異にしており、本国放映時は盛大にこけたという。だが、そんなのほど、よくできているというのは戦争映画が抱える大いなる矛盾かもしれない。必見だ。




ジェネレーション・ウォー/Generation War

ドイツ側の視点で東部戦線をドラマ化したというもうその設定だけでも奇跡の一本です。ドイツが作る戦争映画はとにかく陰惨で華々しいところがいっさいなく、ひたすら暗い気持ちになり、戦争なんかしてる奴らってバカなんじゃないのと思うしかないものばかり。この傾向は戦後すぐにはじまっており、周囲の戦勝国が英雄譚としての第二次大戦を描く一方、ひたすらどんよりしてて登場人物がのきなみ全滅する映画ばかり作ってきた。そんなドイツは戦争映画界では抜群に信頼できる国だ。

そのドイツが、誰がどう語っても地獄と呼ぶしかない東部戦線をふんだんに予算をかけて丁寧に作った。それがこのジェネレーション・ウォーだ。正直、このランキングにはフィルスマイヤーの「スターリングラード」を絶対に入れるべきだと感じていたが、同映画の志を正当に受け継いでいるこの作品を代わりにランキングに入れることにした。冷徹でスカッとするところが一切ない戦闘シーン、どんなにあがいても歩兵では戦車など重火器に対抗できないというリアリズム、重要な登場人物もどんどん死んでいき、生き残った人も無言で呆然としているだけという。そのあたりはまさしくドイツ戦争映画。ドラマなので銃後の描写もかなり豊富に含まれているが、ナチ政権の異様さをよく描いており、汚いやつほどうまいこと生き残る流れなど、後味も最悪。邦題が地味でいまいち話題にも上っていないようだが、ぜひみてほしい戦争ドラマです。



野火

市川崑の59年の映画。
我が帝国が誇る悲惨な負け戦映画だ。どうにもならん。フィリピン・レイテ島における消耗戦を描いているが、戦闘シーンなどほとんどなく下っ端兵士が肺病に侵され、食料もなく、弾もなく、敵にも会えず、ただ自滅していく姿を描いている。お互いの痩せ細った肉を奪い合うだけの最悪の世界。大義だの高潔なアレコレも飯がなきゃなんだったか思い出すことさえできない。こんな適当な作戦を立てた大本営は万死に値する。なぜ我々は天下国家を語る時権力者の肩を持つのか?末端でひどい目にあわされた兵士の涙に頓着しないのはなぜか?下っ端兵士がもう二度とこんな目にあわぬように。飢餓地獄で息絶えていった彼らの死に報いるためにも、
こんな無茶な戦争は二度としないでいただきたいと願っている。

役者陣の演技力がきらりと光る映画で、痩せてて顔色悪くて軍服はボロボロだし薄汚れているし、顔や声に覇気が全くない感じなど、この徹底した役作りが完成度の高い”飢餓の世界”を演出しているのだ。派手なドンパチはなくとも優れた戦争映画は作れるのである。




プライベートソルジャー/When Trunpets Fade

「ハンバーガーヒル」のジョン・アービン監督作品。兵隊になるの絶対嫌だな、と文句無しに思える戦争映画がこれ。邦題があまりに安いので敬遠されてるんじゃないかなぁと心配になりますが、これは最高の戦争映画の一つ。ぜひ観て欲しいですね。

ノルマンディー上陸作戦後、進撃を続ける連合軍がひっかかってえらい目にあわされたのが、この映画の舞台、「ヒュルトゲンの森」。ドイツ・ベルギーの東部国境地帯における激戦によって両軍に25万人の死傷者、行方不明者が出た。アメリカ側の戦死傷者は13万人で、地形の影響もあり、戦車が歩兵を効果的に支援できず、犠牲者が拡大したとみられている。

まあここで自殺的な突撃戦術に固執したバカな上層部の命令により、何度も何度も歩兵だけで突撃させられ、地雷と塹壕と88ミリ砲の洗礼をたっぷりとあびた挙句、W号戦車にトドメを刺される末端アメリカ兵の姿が大変泣ける。描かれているのは世界最強のはずの米国の完敗。絶対歩兵にはなりたくない。戦争なんか行きたくない!そう思える戦争映画でありながら、スペクタクルもまあまあ健闘しており見応えがある。最近レンタル屋でもあまり見かけないがオススメの戦争映画です。



【おわりに】
いかがでしょうか?ホントなんなんでしょうね。このランキング。どこに需要があるのでしょうか。。今回も全くわけがわかりませんね。

戦争なんてくだらないですけれども、これだけたくさんの人々が死力を尽くして殺しあっていたのだからドラマも生まれますよね。必然的に。そして、負け戦の中にこそ人間の誇り高き姿が・・・特に見えてこないですねえ。。。惨めで泥まみれで汚いだけ!
まあでもそういう世界もあるのですよ。。。

文・免責/戦争映画中央評議会

 

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