社会主義

1.社会主義とは
 「社会主義(socialism)」という言葉はラテン語のsociareを起源に持ち、連合する、とか分かち合う、といった意味がある。
 社会主義とは特定の政治的立場や信条のことである。その発祥は自由主義、保守主義と同じくフランス革命後であると考えられている。社会主義の概念は大変ねじれており、理解が難しい。一言で思い浮かべるのはスターリンの大粛清や毛沢東の文化大革命、天安門事件、ベトナム戦争、キューバ危機、ミサイル、戦争、虐殺といったネガティブなイメージである。しかし、これら全てが一言で「社会主義」と呼べるものではない。社会主義の一つの形態であるということができる。社会主義といっても細分化が激しく、全てを完全に理解するのは大変な労力と時間を必要とする。一般的にはみんなを経済的、政治的に無理やり平等にすれば平和で暮らしやすい理想社会になれる、こんなすばらしい思想に反対するものはみんな殺ってよし!とするスターリニズム、毛沢東主義がイコール社会主義と思われていると思う。

 よって、最も我々にとって興味深いことは社会主義が危険思想であるか否かということであろう。社会主義といえば北朝鮮のような独裁圧制の下で不当に苦しめられている国民が浮かぶ。これは集産主義と呼ばれ、経済や国民を統制するのに国家権力を用いることである。これは社会主義と結び付けられやすいが、実際には集産主義体制は国民や経済をコントロールする「方法」であり、道具的意味合いが強い。これは思想、信条とは立場を異にするものである。とは言っても数多くの社会主義者がこの方法を利用した、利用しようとしたことは事実である。だが、集産主義はその他の独裁国家でも必ずといっていいほど用いられている方法であり、社会主義イコール集産主義とは言えない。集産主義体制を否定した社会主義者も存在するのである。

共産主義と社会主義
 共産主義は社会主義をより原始的にしたものであるといわれている。共産主義は人間の消費の調整に関する考え方である。共産主義は修道僧の共同体や原始的部族の中で実践されていた。それに対し社会主義は産業社会の中の近代的な装置であると言われている。しかし、このような概念区分は全ての人々に受け入れられているわけではなく、実際両者の区分けは曖昧である。よく言われる革命的熱狂の度合いが両者の区別を明確にするとする説には懐疑的な意見が強い。現在における革命集団や陰謀セクトに至るまで社会主義者を自称する者は非常に多い。

2.社会主義思想の起源
 近代初期の思想運動の最中、社会主義思想の確立に貢献した多くの思想家がいた。「ユートピア」を書いたトマス・モア、ドイツ・マルクス主義の第一人者であるカール・カウツキーがいる。後者はよくマルクス主義の教祖として引用される。また古くは清教徒革命の頃のレベラーズやディガーズといった集団が社会主義の母体としてしばしば高く評価される。例えばこんなものである。

国家権力は所有制度と関係しており、その制度を支える思想とも関係している。ディガーズの指導者は競争に代わってコミュニティへの関心を要求する点で、また、政治的自由が経済的平等なくしてあり得ないと主張する点で極めて現代的である。

 また、二つ目の見解としてフランス革命直後の時代に焦点を当てると、フランス革命は社会主義という言葉そのもの、ならびに社会主義イデオロギーを信じて行動する運動を生み出したるつぼであったと言われる。急進的な社会行動と政治運動によって民主主義、権利、正義、平等を拡大しようとする試みは、ヨーロッパ思想に大きな衝撃波をもたらし、今なお強い影響力を持ち続けている。
 産業革命も大きな促進剤として働いた。資本主義の発展と都市労働者階級の成熟をもたらしたからである。この階級は多くの社会主義運動の中心的な構成員となった。資本主義は社会主義者による批判の的となり、緊張と対立をもたらした。多くの社会主義者たちは資本主義をはじめから嫌悪すべき対象であるとし、全ての不正義と不平等の根源であるとした。資本主義を批判し、代替的な政策を推進しようとして、多くの社会主義者たちは民主主義的参政権、労働組合の権利、議会改革ならびに働く人民のための社会的正義を拡げようとする要求を含んだ急進的なフランス革命の伝統の言葉を利用した。これらの理念を実現するためには大衆行動を利用する必要があった。しばしば社会主義者と労働者の共同体は、自らの主張を代弁させる手段としてお互いを利用したのである。

 1840年代から1880年までに社会主義は次第に成熟し、イデオロギーとして確立されていった。「資本論」を書いたドイツ系ユダヤ人マルクスは、社会主義の理論的な思想を統合したことや説得力のある説明を提供した。マルクスの用いた用語はその後のヨーロッパにおける社会主義の基調となった。1914年まで、ドイツの社会民主党はヨーロッパにおける社会主義の支配的勢力を担っていた。この頃はマルクス主義の全盛期と呼ばれる。

 1918年、ソビエト連邦のボルシェビキ党がドイツの社会民主党に代わって社会主義勢力の期待の星となり、その指導者レーニンは、マルクス・レーニン主義を公式の原理として革命を推進した。
 しかし、社会主義はこの頃から奇妙なまでに分裂を起こし、それぞれの勢力が別の意見を持ちはじめることになる。ドイツ社会民主党は元々マルクス主義を錦の御旗に掲げていたが、次第に修正主義的な方向に進み始めた。イギリス社会主義は独特のユニークな改良を続けていた。第二次世界大戦後になると更に分裂が起こり、マルクス主義はトロツキー主義、スターリン主義、レーニン主義、修正的マルクス主義、毛沢東主義、人間的マルクス主義、アフリカマルクス主義、実存的マルクス主義、ユーロコミュニズム、構造主義的マルクス主義、フェミニストマルクス主義その他多くの潮流に分化、発展していった。これらを一つ一つ説明するのは困難かつ無意味である。これらの猥雑な主義主張はそれぞれが自らが正統であると主張し、お互いに対立していたのである。1990年代に生き残った社会主義者たちの多くは改良、民主、修正的なものである。

3.社会主義は危険思想か?
 社会主義は必ずしも危険思想とはいえない。上記のように、スターリンやポルポト、チャウチェスク、毛沢東のような一部の過激な共産主義者の蛮行は、社会主義という大きな概念の中の本の一握りの思想であると考えざるを得ない。そして東西冷戦において資本主義が勝利したとはいえ、資本主義こそが唯一の正義であるという考えは誤りである。産業革命時代には今で言う労働基準法のようなものは存在せず、弱者がこき使われ、過剰利得を資本家が搾取していたという原始的な資本主義体制が多くの労働者を苦しめていたことは事実である。このような社会背景から、社会主義が多くの下級労働者の希望の星となっていた事実は否めない。社会主義がもたらした効能も計り知れないものがある。現在の資本主義国家の多くは社会主義の良い面を多かれ少なかれ取り入れている。

※現代日本の拝金主義、実力主義、共同体としての「世間」の消失、全く守られていない形だけの「労働基準法」は、程度こそ違え資本主義の悪い面が露呈していると見ることができる。社会主義は資本主義の次の段階として概念化された思想である。社会主義は資本主義が急進的に進む国、現代のアメリカや日本でこそ流行する思想である。その点、ロシアでソヴィエトという社会主義国家が資本主義より優れた国として本当に機能するのか、という壮大な実験は、全く滑稽なことであった。何故なら当時の帝政ロシアは全く資本主義国家ではなかったからである。また、中国も資本主義国家とは言えなかった。資本主義から社会主義に移行した国は実はまだ存在していないのである。
冷戦によるソヴィエト連邦の敗北、文化大革命の努力むなしく資本主義国化する中国など、社会主義の未来は絶望的であり、社会主義は誤った思想であるとする偏見が取り払われない限り、資本主義が依然大きな力を握り続けることは間違いないだろう。

 社会主義が危険思想といわれる所以は、その多くが急進的社会主義者の革命的転覆、秩序を乱そうとする暴動のその凶悪性によるものである。社会主義は全く新しい、理論上でしか存在しない思想であった。そんな空論を実践するとなると反対論者が多数現れるのは必然である。また、その時代強大な権力を握っていた資本家が、みんな平等になることによって失墜することを恐れて、金に糸目をつけず社会主義運動を妨害した。社会主義国家を平和的に作るということは事実上不可能であった。それゆえに強力なカリスマ性を持つ指導者が、陰謀に陰謀を重ね、権力を握った後、反対論者を抹殺するという構図が出来上がったと考えられる。みんな平等の理想社会を作るために強力な権力者を必要としたところに多大な矛盾があるのである。そして、権力者の多くは死ぬまで権力を手放さず、国家を私物化し、無残な末路を呈したことは歴史が証明している。否、今の北朝鮮を見ればわかることである。

4.社会主義の未来
 社会主義に未来があるとすればそれは民主的手法によって、社会主義の良い面を取り入れることにあると筆者は考える。
 資本主義は万能ではない。多くの矛盾点があることもまた事実である。現に守られていない労働基準法や、過労死まで出る過酷な職場環境、金のかかりすぎる子育て、そこから生まれる共働きの必要性から子供にとっては非常に生きにくい社会である。少子化が進むのも当然のことである。どこまでもアメリカ式に進む日本経済は、これからも多くの問題をはらみ、多くの病理を露呈するだろう。その時に過酷な職場に置かれる労働者たちが団結しないと誰が言い切れるだろうか?革命には多くの犠牲が払われる。これだけは絶対の真実である。

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